STORY

2024.01.28 OA
誰かと共に生きること

化学の知識を基においしくてやさしいごはんを作る自閉スペクトラム症の料理人ありす(門脇麦)と、ありすを男手一つで育ててきた心護(大森南朋)。ずっと2人で暮らしてきた家に、ありすの店でバイトすることになった倖生(永瀬廉)が転がり込んできて、3人での新生活が始まった。

こだわりが強すぎるありすの生活は、朝からルールだらけ。みそ汁の具材は曜日ごとに決まっているし、調味料はいつも決まった順番に並べておかないとダメ。テーブルの拭き方にも規則性があって、スーパーまでの道順も毎日違うパターンがある。頭が混乱する倖生は、ありすの親友・和紗(前田敦子)のアドバイスを受けながら、ルールを1つ1つ覚えていこうとする…。

ランチの時間。『ありすのお勝手』に常連の雅美(伊藤麻実子)がやってくる。浮かない顔の雅美はテーブルに着くなり、「もう限界だわ。離婚しようかな」…夫への不満を募らせる雅美を厨房から観察したありすは、ストレスを吹き飛ばすとっておきのメニューを提供する。
一方その頃、心護は大学の研究室であらぬ不安に駆られていた。自分が留守の間、ありすと倖生は2人きり…。年頃の男女が一つ屋根の下で暮らすのって、アブナイんじゃ…?気が気でない心護は、家に帰ると、ありすと倖生を2人きりにしないように右往左往…!そんな中、ありすの“ルール”を覚え切れない倖生は頭がパンク寸前。ルールを守りきれない倖生にありすは…。
誰かと一緒に暮らすのって大変。他人と生きていくってどういうこと?ありすが見つける答えとは…?そして、倖生はありすの家である物を発見する。ありすの母について心護は何か隠しているようで…。

以下、ネタバレを含みます。

“ありすのルール”を覚え切れず頭がパンク寸前の倖生は、和紗に相談。何をやっても裏目に出てしまうし、そもそもありすは目も合わせてくれない…「俺、嫌われてんすかね」という倖生に、和紗は「ありすは本当に信頼した人としか目を合わさない。信頼されるには努力が必要」とアドバイス。実際、ありすが目を合わせるのは和紗と心護くらいなもの。その代わり、一度心を許したら、その人をとことん信頼するのがありす。ありすは、優作のいじめから救うなど幼い頃から守ってきてくれた和紗に、高校までぴったりとくっついて過ごしてきた。その信頼に応えようと、和紗も向き合ってきたという。「人と人とは信頼関係だよ」と倖生を諭す和紗。

そんな和紗に由々しき事態が発生。夫・金之助(大東駿介)がキャバクラ嬢と2人で飲みに行ったらしいのだ。「あいつとは一緒に暮らせない!」と怒り心頭の和紗。一方、雅美もついに夫と大ゲンカ。家事は夫婦で分担しようと決めたはずなのに、夫は何もしなくなり、夫婦関係は破綻寸前。もはや「夫のやること全てにむしずが走る」と言う雅美。“むしずが走る”というのは、“気になって仕方がないこと”だと教えられるありすは、とうとう教えた調味料の並べ方を間違えた倖生に、「むしずが走っています!倖生さんとは暮らせません!」と家を飛び出してしまう。
和紗の元に転がり込んだありすは、胸の内を吐露する。倖生は好きだし一緒にいるのはとても楽しい…でもどうしても倖生に自分のルールを押し付けてしまう……「私はすごくわがままな人間です」…。悩めるありすは和紗から、人と一緒に暮らすには“譲り合い”と“努力”が必要だと教わる。思い返せば、ありすは今まで“人と一緒にいるための努力”をしてこなかった。子どもの頃、料理が下手な父・心護のおかげで料理は大好きな化学で出来ていると知ったありす。料理人になるものの、就職した店ではお荷物扱い。3軒クビになり、見かねた心護が『ありすのお勝手』を開いてくれた。そこに和紗が来て、今は倖生もいて…。自分が努力しなくても、みんなが助けてくれる…なんとか“やれて”しまっている…私はこのままで良いのか…?と考えるありす。

一方、ありすのルールを一生懸命覚えようとする倖生に、「何でこんなにありすに寄り添ってくれるの?」と心護。倖生は、ぽつりと答える。「気持ち分かるんで」。助けが必要な時に誰もそばにいてくれなかったり、つらい時に周りに味方がいなかったり、「そういう時の気持ち、分かるんで」…その言葉に複雑な表情の心護…。

翌日、開店前の『ありすのお勝手』に、雅美の夫・敬(近藤公園)が現れる。家出した雅美が店に隠れているのでは?と詰め寄る敬に、ありすは「私は月曜日、赤色のコップを使います。火曜日は…」と、自分のルールを列挙する。意味が分からずイラ立つ敬におびえ、何も言えなくなるありす。すると、「たぶん、奥さんのことです」と倖生がありすの気持ちを代弁する。雅美にとって夫婦のルールはすごく大事だった、それをありすは伝えたかったのだと。頭を殴られたように言葉を失い、椅子にへたり込む敬…。昨日から何も喉を通らないという敬に、ありすは『食欲不振を吹き飛ばす薬味たっぷりのアジの雑炊』を作る。あったかい雑炊を食べた敬は、涙して…。

その夜、「昨日言ったことは撤回します。これからも倖生さんと一緒に暮らしていきます」と宣言するありす。そして、倖生の目をまっすぐ見て、自分のルールを一部、倖生に合わせると提案。ありすと初めて目が合って動揺しながらも嬉しい倖生と、2人の様子に少し複雑な心護…。

一方、五條家。創業250周年を目前に五條製薬の経営は順調で、道隆(北大路欣也)は上機嫌。蒔子(木村多江)と誠士(萩原聖人)に子どもがいないことを残念がる。蒔子が「お父さん、うちには…」と言いかけると、道隆は遮る。「忘れろ、あの子のことは。どうせ何の役にも立たん」―――。
その頃、八重森家で古いアルバムを漁っていた倖生は、一通の封筒を見つける。中には、白衣を着た研究員たちの集合写真が。若き日の心護が写っている。すると、ありすがやって来て、写真の中の1人を指す…「この人は、私のお母さんです」。それは、蒔子だった。ありすは、実の父親ではないのに心護が自分を育ててくれたから、「母親は死んだ」という嘘を信じたフリをしていると言う。ありすの秘密を知った倖生は――。