11月30日 リハーサルがうまくいったときは、要注意

リオ・オリンピックで、団体と個人総合、2つの金メダルに輝いた
体操の内村航平選手が、本番直前に会場で練習した後、感想を聞かれて、
「良すぎなかったことが、良かったかな」と、ひと言。
...ああ、さすがだ、と感嘆した。
 
テレビの生番組では、リハーサルは十分にできないことが多い。
ニュースは、原稿を1回か2回、下読みし、すぐ本番。
2~3項目の原稿が来ないまま、スタジオ入りすることも、しばしばである。
昔、早朝の情報番組を担当していた頃、
いくつかあるコーナーの、ほんの一部をドライリハーサル、
すなわち、段取りだけをスタッフと確認しているうちに、
もう「本番1分前!」という、タイムキーパーの声。
不安と背中合わせのまま、生放送に突入する毎日だった。

それに比べると、対談番組の収録などは、
準備時間に余裕があり、きちんとリハーサルが行える。
ゲストも、いきなり本番ではないことを喜ぶ。
ディレクターによっては、
「一度、最初から最後まで通して練習してみましょう」
初対面のゲストとのリハーサルが、良い感じで終了。ホッとする。
 
ところが、これが、クセ者なのである。
 
いざ本番。あれ、何だか違う...。
どこか、ちぐはぐな感じで、会話のリズムも良くない。
無意識のうちにリハーサルを「なぞって」いる私。
ゲストが「先ほども話しましたように...」と言ってしまうことも。
結果として、「リハーサルの方が良かったね」
これでは、リハーサルの意味がない。
 
だからといって、雑におこなったり、気を抜いたりしては、もっとうまくいかない。
トークだけではなく、カメラワークのリハーサルでもある。
勘どころは押さえておかなくてはならない。
そのうえで、リハーサルの"成功体験"を一旦忘れて、
新鮮な気持ちで、本番のトークを繰り広げるにはどうすればいいのか...。
 
内村航平選手が生まれる前から、アナウンサーの仕事をしている私なのに、
「良すぎなかったことが、良かったかな」
という、ほど良いバランスには、まだ、なかなか至らない。