今夜の天気予報はツバメの話から始めよう、と思って
本番にのぞんだら、
「こんばんめ」
と挨拶してしまった先輩がいる。
中継の締めくくりに「熱戦の火花が散りました」と言おうとして、
「熱戦の火ぶたが散りました」と言ってしまった先輩もいる。
火ぶたは、戦いの始めに切られるもので、散ることはない。
ついでながら「火ぶたを切って落とす」は「幕を切って落とす」との混同で、
厳密に言えば誤用。火縄銃の火皿のふたは、切り開いても落ちないのである。
日頃、言葉という仕事道具の整理整頓につとめているアナウンサーだが、
時々、引き出しの中の文房具がごちゃごちゃになるような感じで、
思わぬ言い間違いをする。
私も駆け出しの頃、ある芸能人のことを「ナイスミドル(魅力的な中年)」と
言おうとして、
「ミドルナイス」とやってしまい、「わけが分からんぞ!」と叱られた。
他局では、スポーツ大会の開会式で
「一糸まとわぬ行進です」と実況してしまった人もいるという。
もちろん「一糸乱れぬ行進」の間違いだが、本当にそんなことが起きたら、
これはもう、古代オリンピックの再来...!?
東北の放送局に「花の宴」という歌番組があった。
「はなのうたげ!」と、司会のアナウンサーが高らかにタイトルを宣して、
番組が始まる。
ある日のオープニング。響きわたったタイトルは、
「うたのはなげ!」
言った本人も、周りの人々も「何かヘンだな」と思いながら、
番組は進んでいったそうだ。
「花の宴」を「歌の鼻毛」と書き間違える人はいない。
書き言葉は文字、話し言葉は音だなぁ、とつくづく思う。
思ってみても、言い間違えたひと言は、消せないけれど。
言い間違いをしたことの無い!藤井恒久アナと。