3月5日 アナウンサー試験

アナウンサー試験は、会社により、年により、さまざま。
私が受験した35年前(!)の日本テレビの音声試験問題は、
句読点のない文章を、自分なりに考えて、間を取って読む、というものだった。
 
それほど難しい内容ではなかったが、「、」も「。」も全くついていない文章を見ると、ちょっとドキドキした。
そして、どういうわけか、5人一組で行われた。
最初に読む人は大変である。
 
私の読む順番は、グループの中で2番目だった。
最初の人が、正確に読んだ。端正で、今考えても、見事な読みだった。
次に読む私は、それをなぞればいいのだから、楽である。
うまくはないが正しく読めた。得しちゃって、最初の人に申し訳ないな、と感じた覚えがある。
 
ところが、3人目から5人目の受験者は、ところどころ間違えた。
おろおろして、文章の最後まで読むのがやっと、という人もいた。
緊張感で、他人の声が耳に入らなくなっていたのかも知れない。
結局、次の段階の試験に進んだのは、そのグループでは最初の人と私の2人だった。
 
その後、アナウンサーになって仕事をするうちに、あの試験の意図が次第に察せられてきた。
画面に出て人前で話す仕事に緊張はつきもの。
ドキドキしながらも自分を失わず、周囲の状況を見聞きする余裕を持てるかどうか。
落ち着き、言い換えれば"ふてぶてしさ"が試されたのだ。
 
ふてぶてしいだけでオッチョコチョイな私だが、周囲が騒然とすると、
なぜか、すーっと冷静になっていく自分を感じることがある。
報道番組では、時にそれが役立ったこともあった。
もっとも、その後、同様の試験問題が出たという話は聞かない。

(写真は新人の頃。スタジオにて原稿読みの一枚)