バスケットボールのワールドカップが、まもなく開幕する。
日テレでは、バスケの中継は、かなり長いブランクがあったのだが、私は40年ほど前、かつてのバスケ中継を、ささやかに手伝った。いや、単なるおじゃま虫であった…。
「君、中学ではバスケ部か。じゃあ、サブアナ」
と、スポーツ中継の何たるかも知らない駆け出しなのに、メインの実況アナの隣でスコアをつけることになったのである。
「ターンオーバー(攻守入れ替わり)の回数さえ、教えてくれればいいから」
と、実況の芦沢俊美アナウンサーの注文はきわめて簡単なものだったのに、中学レベルとは比較にならない目まぐるしい試合展開に、うろたえ、回数を数え損ねて、「何回?」と目で尋ねる芦沢アナに対して、私は、首を横に振ることしかできなかった。
芦沢さんの、小さくついたため息を思い出すと、今でも申し訳なく、うつむいてしまう。
主音声実況のサブアナとしては使えない、というので、次は副音声で、初心者向けのルール解説の聞き手をつとめることになった。
この、副音声の顔ぶれが、豪華であった。
解説は、プロレスラーのジャンボ鶴田さん。ゲストは声優の日髙のり子さん。
ジャンボ鶴田さんは、もともとバスケットボールの選手だったのだが、「バスケでは日本はオリンピックに出られない」と思い込んで、レスリングに転向し、ミュンヘンオリンピックに出場。その後、プロレスラーとなった方である。
「タッチ」の南ちゃん役で著名な声優の日髙のり子さんは、学校時代バスケ部だったということで、その経験とチャーミングな声を副音声で生かしてもらおう、という企画であった。
ここでも私は、聞き手の役目をきちんと果たすどころか、スーパープレーの連続に、キャッキャと興奮して、日髙のり子さんの方が、これではならじと、ジャンボさんに「このプレーは、どういうものなんですか?」と質問してくれる始末であった。
若い女性2人のはしゃぎぶりを、穏やかなまなざしで包み込み、終始笑顔で、丁寧に解説してくださったジャンボ鶴田さん。大きな、優しい方だった。
8月25日開幕のワールドカップを、私は、こんな昔の思い出と重ねて、楽しみたいと思っている。自らの失敗がよみがえり、一人で赤面したり、うつむいたりするのかなァ…。
バスケットボールという競技に、あなたは、どんな思い出や憧れをお持ちだろうか。