4月12日 ちっちゃい頃から

行きつけの、といいながら、1年以上、足を運んでいなかった小さなレストランに、

一人で夕飯を食べに行った。

「あ、お久しぶりです。良かった、元気そうで」

イタリアで修業したシェフが、人なつこい笑顔で迎えてくれる。

開店から10年を超える店だが、去年はどうなることかと思ったという。

持ちこたえてくれて、こちらも嬉しい。

間隔をとったカウンター席で、久々にシェフのトマト料理を味わった。

帰りがけ、

「体に気をつけてくださいね。僕は、ちっちゃい頃からテレビで見てるんですから」

そろそろ中年といってもいいシェフにそう言われると、「?!」と思うが、

数えてみれば40年以上、アナウンサーとして仕事をしている。

40年前は、確かにこのシェフも「ちっちゃい」子だったことだろう。

 

3年後輩のアナウンサーが、

「新入社員に、『母がファンでした』と言われちゃったのー」

と笑いころげていたのは、もう数年前のことになる。

さまざまなことがありながら、時の流れは速い。

定年後も仕事を続けられている幸運に感謝しつつ、

「祖母がファンでした」

と誰かに言ってもらえる日を夢みて、もう少し頑張ろうかな、と思う。

春、また新しい仕事仲間を迎える季節である。