3月9日 犬、鮭、牛

今年初め、戌年にちなんだ、犬の特集のナレーションを担当し、一瞬、読み方に迷った。
「紀州犬」...もちろん「きしゅうけん」だが、ひょっとして、「きしゅういぬ」かしら?
と思ったのだ。「○○犬」の読み方は、一様ではない。
「秋田犬」「土佐犬」「柴犬」...子供の頃は「あきたけん」「とさけん」「しばけん」だと
思っていた。放送での読み方は、秋田犬は「①あきたいぬ ②あきたけん」。どちらでも
構わないが、地元の保存会は「あきたいぬ」と呼んでいるので「あきたいぬ」が優先。
「土佐犬」も「①とさいぬ ②とさけん」
「柴犬」は「しばいぬ」


アナウンス部には、番組制作の現場から、言葉に関する問い合わせがよく来る。
「鮭は、サケですか?シャケですか?」
「サケ・シャケ」問題は、秋冬の"定番"。シーズン中、3~4回は寄せられる。
どちらが正しい、間違っている、というものではないが、「シャケ」は「サケ」が転じた
もので、ややくだけた響きがある。「サケ」を基本にしておいた方が無難ですよ、と言うと
「でも、『シャケ』の方がうまそうだ、とプロデューサーが言っておりまして...」
それならば、「シャケ」でどうぞ。しかし、感覚の問題だから「サケ」のほうがおいしそう、
と感じる人もいると思う。「塩ザケ」、「塩ジャケ」、あなたはどちら派ですか?


牛も、しばしば話題になる。松阪牛、近江牛...家畜としては「○○ウシ」、
食肉になると、「○○ギュウ」を原則にしているが、肉になっても「○○ウシ」と呼んでほしい、
と地元が望む場合がある。旅先のグルメリポートならば、地元の呼び方に従うのも、
自然でいいかも知れない。
でも、東京のスタジオから伝えるならば、やはり「○○ギュウのステーキ」かな?


どちらでもいいような、ちょっとした事柄が、迷いと悩みの種になる。
だから、言葉はややこしく、だから、言葉は面白い。

書道師範の杉野真実アナウンサーに書いてもらいました。