3月19日 誰がために問う

すぐれたインタビュアーとは、どういう人か?

「いい質問をする人」

と、私もこの仕事に就くまでは、思っていた。

確かにそうではあるのだけれど…それでは、「いい質問」とは何か?

美しい言葉遣いで、的確なポイントを押さえた質問か?

鋭い語調で、相手を追い詰める質問か?

新人の頃、先輩アナウンサーのインタビューを見ていると、質問の言葉自体は、それほど光っていると思えないのに、相手の本音や、新たな情報を引き出している場面がしばしばあった。

そうか、質問ではなく、答えが肝心なのだ、という当たり前のことに、気づかされた。

 

すぐれたインタビュアーとは、

「いい答えを引き出す人」

そのために必要なことは?

事前には、相手やテーマについての下調べ、尋ねたいことの優先度や順番の整理整頓。

本番では、雰囲気や流れを大切に、相手としっかり向き合うこと。

質問の言葉よりも、インタビュアーの表情や相槌の打ち方で、答えのその先、もっと深いところを探り当てることも、ときにはある。

そして、一番大事なのは、何のために、誰のために問うているのか?ということ。

何のために? 真実を引き出すために。

誰のために? テレビの場合は、言うまでもなく、視聴者。

インタビュアーは、政治家、芸術家、アスリートなど、様々な分野の、スターや話題の人、時に疑惑の渦中にある人と、視聴者を繋ぐのが役目。自らも画面にさらされていると思うと、ついカッコつけたくなるのだが、「アホな質問だな」と笑われても、いい答えが引き出せれば、それは、いい質問なのである。

 

すぐれたインタビュアーを目指すなら、場数を踏むしかない。

意外な展開に質問が浮かばす、立往生する経験や、奮闘したのに、通り一遍の答えしか出てこず、悔しさに歯ぎしりする経験を重ねて、少しずつ、仕事が形になっていく。

まず謙虚に、そして、視聴者はもちろん、話を聞く相手にも、礼儀を忘れず、毎回準備し、本番に臨む。終わって反省…その繰り返しである。