12月26日 年越し

ヘリコプターの機上で、新年を迎えたことがある。
1980年代の終わり、大晦日恒例の「ゆく年くる年」で、東京上空から年越しの情景をリポートした。
 
本番の数日前、ヘリで東京都心を下見。
丸の内、大手町、建ち並ぶオフィスビルの、きらびやかな明かりの傍らで、
皇居の森がひっそりと闇につつまれ、落ち着いた、たたずまい。
この対照を描写しよう、と思ったのだが、
大晦日には、オフィスビルの明かりも消え、都心全体がほの暗くなった。
唯一、ピカピカとまぶしかったのは、秋葉原の電気街。
 

 
当時は、毎日変わらず地味な照明だった東京タワーを映し、そこから、明治神宮へ。
六本木交差点から表参道まで、ヘリコプターでは30秒もかからなかったように思う。
地上のリポーターにバトンタッチする地点、明治神宮。
下見の日には木々の輪郭がうっすらと見えるばかりで、何を実況すればよいか困ったが、
大晦日、そこには光の道ができていた。
 
境内の細い参道の両側に、灯火が等間隔に置かれ、
初詣に訪れた人々をほのかに照らしている。
 
よき年を願う、昔に変わらぬ人々の思い。
暖かな色の灯火に浮かび上がった行列が、絵巻物のように長く続いていた...。
 
アナウンサーとして、長らく、ニュースを伝えてきた。
自然災害や、事件、事故により、ある日突然、日常の暮らしを奪われた人々の悲しみと憤り。
今年も、思いがけないことで、人生が変わってしまった人が数多くいる。
日常のもろさ、そして、かけがえのなさ。
 
新たな年の平穏を祈りつつ、年を越しても癒えない「痛み」があることを、忘れてはならないと思う。
再び歩み出そうとする懸命の努力を、周囲は、社会は、支えることが出来ているか?
それを問いかけることも、ニュースの仕事。