シリアの内戦を取材中に銃撃されたジャーナリスト、山本美香さんが亡くなって、10年になる。
私が担当していた深夜のニュース「きょうの出来事」で、アフガニスタンやイラクなど世界各地から届けてくれた彼女のリポートは、紛争地の女性や子供たちの状況を伝え、見る人に鋭く問いかけてくるものだった。
このままでいいのか?何かできることはないのか?
山本美香さんが、今年のウクライナを見たら、何と言うだろうか。
侵攻当初、ニュースにもしばしば出てきた「停戦」という言葉は、どこに行ってしまったのか。
ロシア系住民の理不尽な死を食い止める、というのが侵攻したプーチン大統領の言い分らしいが、その結果、理不尽な死は、双方に増え続けている。
「戦争は、始めるのは簡単だが、終えるのは難しい」と、国際政治評論家の桃井眞さんが言っていらしたのを思い出す。30年も前の湾岸戦争の頃、ニュース解説でお世話になった。
もうやめようよ、と子どものような言葉が口をついて出る。
責任追及は後でもいいから、停戦、せめて休戦。やめる、やすむ、ゆずる、ゆるす、よす…まつわる言葉は、ヤ行が多い。やさしく、ゆったり、よいことを願う響きがあるのだろうか。
ゆとりをなくした当事者に、宥和を勧める友人はいないのか。ユナイテッド・ネーションズは何をしているのか。
もうやめようよ。