4月15日 大山鳴動

「女性誌で必ず売り上げが伸びるテーマは、『収納』と『ダイエット』です」

と、編集者出身の作家が、かつてインタビューした時に、教えてくれた。

この3年、私も在宅勤務が増えて、会社に置いていた、言葉に関する本や、新聞の切り抜き、司会の資料などを家に置くようになった。

狭い我が家がさらにゴチャゴチャして、「あー、何か捨てなきゃ!」と、3日に一度は、叫んでいる。

 

この際、老後に向けての大掃除だ!と意気込むのだが、まず、どこから手をつけていいのか分からない。

それなりの均衡を保っている収納を改めるのは至難の業。体力、気力の衰えもあり(と、言い訳ばかりで)、一向に、はかどらない。

半日近く格闘して、処分できた衣類や書類は、わずかに段ボールひと箱分。

「大山鳴動して鼠一匹」という、ことわざを思い出す。

収納とダイエット。自分の衣食住を把握し、ととのえることは、確かに大いなるテーマである。女性誌に限ったことではないだろう。

 

「大山鳴動」で、思い出したことがある。

1986年、伊豆大島の三原山が噴火した時、

「現地では、鳴動が聞こえているそうです」

と、私は夕方のニュースで速報を伝えた。

番組を終えて、アナウンス部に戻ってくると、

「鳴動が『聞こえる』とは、言わないぞ」

と、先輩に指摘された。

「鳴動」は、大きな物が、音を立てて、揺れ動くこと。音は伴っても「揺れ動く」ことに軸足が置かれた言葉だから、「鳴動が聞こえる」は、おかしいのである。

昔の先輩アナは、言葉遣いについて、その都度、注意や指導をしてくれた。

今、私は後輩たちに、こんなに、こまめに助言できているだろうか…?