10月17日 つんつるてんとアッパッパ

若い頃、お見合いをして結婚には至らなかった女友達が言っていた。
「とてもいい人。親切で、頭が良くて。ただねェ...ズボンの丈が短いのよ」
結婚を想定した時に生じる微妙な違和感をよく表しているな、と思った。


最近は、短いズボン丈が流行っているらしい。
スタジオで、立ってニュースを読んでいる若手アナウンサーに、
「伝え方は、とてもいいと思う。でも...ズボンの丈は、あれでいいの?」
と聞くと、キョトンとして、次にニッコリ。意に介さない。
私の言葉にうなずくのは、おじさんアナばかり。
昔なら、つんつるてんのズボンで人前に出なさんな、というところだが。


子供の頃、一枚の洋服を長いこと着て、
小さくなると(つまりは自分が大きくなると)、
「つんつるてんになっちゃったね」
と、弟妹や親戚、さらには、近所の小さな子にあげた。
私も、お隣のお姉さんのお洒落な「お下がり」を着て喜んでいた。
昭和30年代、夏は今ほど猛暑ではなかったけれど、家庭にクーラーはなく、
祖母や母は「アッパッパ」と呼ばれる簡単服を着て、団扇で胸元をあおいでいた。
なぜ「アッパッパ」なのか、調べたこともないけれど、
「つんつるてん」と同様、弾む語感で、
人前に出られない、寝間着のようなワンピースの命名としてぴったりだと思う。


今も「お下がり」のやり取りはあるのだろうけれど、
つんつるてん、や、アッパッパ、は記憶の彼方の言葉になっている。
高度経済成長期に差しかかる前、まだ日本中が、つましく、つつましかった頃の
ユーモアと含羞が感じられて、何だか懐かしい。