2月17日 安村 直樹

私の両国国技館での初土俵は、小学5年生です。
小学生年代の日本一を決める『わんぱく相撲全国大会』に東京都代表として出場し、
両国国技館で相撲を取る幸せに恵まれました。
 
土俵にあがると、そこは異空間。
四方のライトに照らされ、不思議と土俵は小さなスペースに思えるのに、
同学年の相手は壁のように大きく感じます。
観客席に目をやっても、距離感がつかめず視界はぼやけてしまい、平衡感覚を保つので精一杯。
「手をついて、待ったなし!」
行司の声で我に返り、無意識にとっていた蹲踞の姿勢から腰をあげ、両こぶしをつきます。
「はっけよい、のこった!」
次の瞬間、土踏まずに感じた俵のチクッとした痛みと、蛇の目の砂のひんやりとした感触が、
私に黒星を教えてくれました。
憧れの両国国技館での取り組みはあっけないものでしたが、17年前の光景を、今でも鮮明に思い出すことができます。
 
祖父が欠かさず見ていたテレビの大相撲中継。
まだ赤ちゃんだった頃から、私は祖父の膝の上で、喜んで手を叩きながら見ていたようです。
幸せなことに、幼い頃からよく相撲部屋の稽古を見学させてもらっていました。
稽古を見て大好きになった力士が安美錦関。鋭い立ち合い、多彩な取り口、
なにより、間近で見た集中力には凄みがありました。
現在、関取最年長の38歳。
度重なる大怪我とも戦いながら、今も変わらず誠実に相撲と向き合う姿は、私にとってのヒーローです。
 
第72代横綱・稀勢の里関が誕生し、これからますます盛り上がっていくであろう大相撲の魅力を、
私もアナウンサーとして様々な番組で誠実に伝えていきたいと思います。