2月28日 鈴木崇司

ソチオリンピックが幕を下ろした。

今大会、日本の選手団は8つのメダル獲得。
長野オリンピックの10個に次ぐメダル数となった。

特に顕著だったのは、スノーボードやフリースタイルスキーなど、
いわゆる新種目での日本代表選手たちの活躍。
日本の冬の競技のすそ野が広がった大会といっていいだろう。

オリンピックという夢の舞台で
メダルを獲得した選手たちのニュースを伝えること、
快挙を達成した選手にマイクを向けることは
私たちアナウンサーにとって非常に栄誉なことである。

4年間の苦労を「メダル」という勲章で締めくくった選手と、
その選手を取材し、オリンピックに対する思いを伝えてきたアナウンサー。
メダルを取ってもなお向上心を抱くアスリートに対するインタビューは、
アナウンサーにとって非常に刺激的な時間である。

しかし、一方で、今大会とくに顕著だったのは、
メダルが期待されながら、惜しくもメダルに届かなかった選手が多かったこと。

世界のトップ選手が集うオリンピックの舞台において、
メダル獲得こそならなかったが、それでも世界トップ8に入賞するということは、
十分に誇れる成績であることは間違いない。

しかし、「メダルを期待されていたが逃してしまった」、という思いから
選手たちはその責任を一身に背負い、結果を受け止める。

アナウンサーにとって、
このニュースを伝えること、
また、惜しくもメダルを逃した選手にインタビューをすること、
これは、私のこれまでの経験からも、非常に難しいことである。
4年に一度のオリンピックにすべてを捧げてきた選手の思い知っていればなおさらだ。

5大会連続でオリンピックに出場した上村愛子選手。
私はこれまで3度、冬のオリンピックを現地で取材する機会があったのだが、
その中でも、前回のバンクーバーで4位に終わった上村愛子選手へのインタビューは
今なお鮮明に記憶に残っている。
レース直後にマイクを向けると、
「なぜこう一段一段なんだろう・・・」という言葉が溢れる涙とともに発せられた。
その思いを間近で聞いた私にとって、「ソチでは今度こそメダルを取ってほしい」、と心から願っていた。
しかし結果は、4位に入賞するも、またしてもメダルはならなかった。

レース後、取材エリアに来た上村選手の第一声。

「聞きづらいでしょうけど、まっすぐ聞いてください」

インタビュアーを気遣った、その意を汲んでのコメントだった。
改めて上村選手の偉大さに心を揺さぶられた。
その場にいるアナウンサーは、この言葉にどれだけ救われただろう。

負けたばかりの選手に無理して話を聞く必要はない、という議論も確かにある。
しかし、メダルを獲得した選手の喜びだけを伝えるのが報道の、そしてアナウンサーの役割なのか。
私はそうではないと思う。

勝負には文字通り、「勝ち負け」があり、
勝つ喜び、負けた悔しさ、そこに至るまでの過程に、「感動」があるのだと思う。

その状況で、
どんな表情で選手に接し、
どんな言葉を選び、
どんな質問をするのか。
まさにこの瞬間こそ、アナウンサーの技量が問われるときである。

オリンピックは閉幕したが、
今年はサッカーのワールドカップを中心に、多くのスポーツイベントが行われ、
さらに、2020年にはこの東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。
多くのインタビューをする機会があるだろう。
改めて、高い意識を持って取材し、準備をし、その瞬間を迎えたい。