8月16日 「街でもらったティッシュの行方」 藤井貴彦

皆さんは町で配っているポケットティッシュもらいますか?
私は遠慮して、ほとんどの場合もらいません。
すでに鞄に1つ、ぺったんこになったポケットティッシュが入っているという事情もあります。

そんな、あまり存在感のないポケットティッシュから
ある教訓にたどり着いた話を大げさにご紹介します。

ある日のこと、飛行機で東京に戻る途中、
客室乗務員さんが配っていた飲み物がとなりのお客さんにこぼれました。
ドラマのようなシーンですが、これは現実で、
ジュースはお客さんの読んでいた小説と、食事用テーブルにこぼれます。

「なにか拭くものー!」と、心の中で叫びますが、
客室乗務員さんの手元に適したものはありません。
「なにか拭くものー!」と今度は自分に問いかけたところ、
あのぺったんこティッシュの存在が急浮上します。

足下の鞄から、厚みを失ったポケットティッシュを取り出し、
ビニールを真ん中からバリッと開く。
初めて会った彼とは、これが別れの時ですが、
感傷にひたる間もなくティッシュを引き抜き、液体に投げかける。
白いティッシュはオレンジの液体をぐんぐん吸収してなんとか一件落着...。

「ふー、ティッシュ、役に立ったなあ」
あの仕事ぶりはたいしたものだった。
いざという時にきちんと仕事をするってなかなか難しい。

そんな風にティッシュの偉業を振り返っていた時に、
かつて大先輩から教わった「いいアナウンサーの条件」を思い出しました。
それは、
『大舞台に巡り合った時に、戦える実力があるかどうか』。
常に腕を磨き、大舞台を待つ。

ティッシュから始まった大げさな話はひとつの教訓に落ち着きましたが、
私達アナウンサーはいざという時の準備をとても大切にしています。
アナウンサーによってその準備内容は違いますが、
私の担当するnews every.では突然の緊急地震速報に対応するため
CM中でもアナウンサーがカメラの前でスタンバイしています。
このスタンバイはちょっと異様に見えるのですが、これまで何度も役に立ってきました。
備えておくって本当に大切ですね...。

そういえば、いま私のカバンには大切なポケットティッシュが入っていない。
準備の徹底を図りたいと思います!