8月7日 中島芽生

午前4時過ぎ。福島県の桃農家さん。

桃を収穫する作業の手を止め、自分の背をゆうに超える高さの脚立を抱えたお母さんが、
「ここに上って、ちょっと見てみて」と、私に声をかけてくれました。
お母さんが指していたのは、東の空。
そこには輪郭のくっきりとした、真っ赤な朝日が昇ってきていました。
小さな一点からまっすぐに差し込む光は、
一日の始まりの、ほんの数分間だけ見ることができるという、とても静かな景色。
しばらくすると、その輪郭はぼやけ、光が緑の木々や、朝露のついた青い稲に降り注いでいきます。

「私たちにはいつもの景色なんだけどね」
収穫したばかりの桃が入った籠を抱え、お母さんは嬉しそうに、そう話してくれました。

every.の取材で訪れた、福島県の古山果樹園。
顔を少し近づけるだけで甘い香りがふわっと広がり、採れたてにかぶりつけば、果汁があふれ出す。
「風評被害」など感じさせない、みずみずしい桃。
けれど実は、震災後すぐ、それまで5000円で売れていた桃のセットが、
10円で取引されていたこともあったほど、風評被害の影響を受けたそうです。
「悔しかった。このままじゃ福島の桃はダメになってしまうと感じた。」
その時の気持ちをそう話すのは、古山果樹園の息子さん。
脱サラをし、お父さん、お母さんから家業である農家を継いだのは、震災が起こる8か月前。
原発事故というひとつの出来事によって、大きく変わってしまった現状を何とかしたいと、
都内に自ら桃を売りに出てきたこともあったと言います。


試行錯誤の4年間。その甲斐あって、価格はまだ以前の7割程度ですが、お客さんの数は増えたそうです。
「震災の前も、その後も、作り方も、
お客さまにおいしい物を食べてもらいたいという思いも、何一つ変わってないんですよ。」
福島という土地、いつもの景色、
そして、そこから生まれる自然の恵みを大切にしたいという、古山さん家族の思いを感じた取材でした。

news every.を担当するようになってから、4か月が経ちました。
現場へと足を運ぶ機会も増え、この人の「この声を伝えたい!」そう感じることが多くあります。
短い時間の中で伝えられることはとても限られていますが、
少しでも「現場に行ったからこそ、感じられたこと」を伝えようと、日々、奮闘中です。


これから、
もっと相手の声にじっと耳を傾け、寄り添えるような、取材や、伝え方ができるようになりたいと思っています!

今日もnews every.は全員野球で放送に取り組んでいます!
どうぞよろしくお願いします!