3月24日 中島 芽生

アテネ軍の勝利を伝えるため走ったことが、マラソンの起源とされる。
箱根ランナーはタスキと歴史を繋ぐ継走で見る者に感動を届ける。
恋愛ドラマには、思いを伝えるため、必死に追いかけ走るシーンは欠かせないし、
メロスだって、友のため、正義を伝えるため、怒りながら疾走する。
 
走ることと、伝えること、案外相性がいいのかも知れない。
私も今回、「東北に元気を届けたい」「東北の良さを伝えたい」
そんな思いで人生で初めてマラソン大会に参加した。

宮城県登米市。
雪化粧した栗駒山が遠くに連なり、そこから吹き下ろしてくるまだ少し冷たい風が長沼を駆け抜ける。その湖沼で行われた東北風土マラソン。東北の「風土」を感じながら、「フード」を楽しんで走るというマラソンだ。コースの2~3キロおきにある、エイドステーションと呼ばれる、給水ならぬ、給食所には、南三陸のめかぶの味噌汁、気仙沼のさんまの煮物、宮城の郷土料理はっと汁、気仙沼のフカヒレスープなど、東北名物が並ぶ。
それらを笑顔で「食べて食べて!がんばってね」と渡してくれるのは地元のボランティアの方々だ。
「次ははっとじる、はっと汁...」と、楽しみに走っていると、知らず知らずのうちに、距離を踏んでいた。

沿道には、小さなイスにちょこんと座った、畑仕事姿のおばあちゃん。ハイタッチをしてくれる、子どもたち。何食わぬ顔でもりもりと草を食べている牛。
初めてのハーフマラソンで完走できるか不安になったり、足が痛み出して、歩いてしまおうかとなった時、地元の人の温かさに何度も励まされた。
 
「どこから来たの〜?東京?そんな感じがしたわぁ~%※○...(地元の言葉で私には聞き取れない...でも楽しそうな雰囲気!)。頑張ってねぇ!!」
 
「...はい!頑張ります!」
 
あれ、東北を元気付けたい、なんて言っていたのに、私が元気をもらってるぞ。
そして、ゴールの瞬間に出て来た言葉は
「美味しかった~!楽しかった~!」
 
大会を主催した竹川隆司さんはこう話す。
「この大会が、世界中の人が東北に足を運ぶ機会になれば。そして、地元の人にも、自分たちの持っているものは、世界に通用する素晴らしいものだと、実感して貰う機会にしたい」
 
これからも美味しいもの、素敵な人に出会うため、そして元気をもらうため東北に足を運び、復興に向けて走り続ける東北を伝えていきたい。