9月10日 森富美

旅先の地名が入ったグッズをお土産にするのは、あまりにもベタすぎやしないか・・・


一度手に取った商品を棚に戻し、店を出て、
でも、店の前を何度も行ったり来たり。
結局レジに運んだのは
「FINLAND」の文字が入ったマグカップ。
お土産と言っても、誰かの為ではなく、
自分の記念品です。


今年2月、世界一受けたい授業の取材でフィンランドに行きました。
「世界一幸せな国」と言われる秘密を探るというミッション、
前の大統領と、現職の教育大臣、日本でも人気のマリメッコの皆さんもインタビューに答えてくださいました。


驚いたのは、事前にアポイントを取ったわけではない
街でたまたま出会った人々も、
日本からやってきたロケ隊の質問に
丁寧に、誠実に、相当な分量の言葉で答えてくれること。
生きるということに対して、
「なんとなく」や「いきあたりばったり」ではなく、
よくよく考えて進む道を選んできた人たちなんだろうなあと感じられました。
そして、自分の選んだ道と同様に、周りの人が選んだ道も大切にすることが、
この国の素敵なところです。


多くの人は、仕事を夕方4時で切り上げて帰ります。
夕食と週末は家族と過ごす時間だからです。
夏休みはまるまる1か月。
その間、職場から連絡が入ることはありません
森に行ってベリーを摘んだり、湖のログハウスで過ごしたりするそうです。
もちろんサウナも!
決して派手でゴージャスなお休みではありませんが、なんて豊かな時間なんでしょう。


また、フィンランドには「イクメン」という言葉も、「働く母親」という言葉もないと聞きました。
育児は男女両方がして当たり前、
女性が働くことも当たり前、
だから特別な名前を付ける必要がないのです。
もちろん、会社勤めだけが「働く」でないこと、
そういう生き方を選ぶことも同じように尊重されることも当然です。


去年フィンランドの首相に選ばれたサンナマリンさんは、34歳で一児の母。
でも、若いことや、女性であること、お母さんであることが
フィンランド国内で注目されることはなかったそうです。
それは、首相としての仕事ぶりとは関係がないから。
日本の感覚では驚きですが、性別・年齢、その他の情報で人を判断しないというところも「幸せ」につながるのかもしれません。


「母」については、こんなこともありました。


私にとってこのロケは、母親になってから初めての海外出張でした。
家のことは大丈夫だろうかと不安もありましたが、
夫は仕事の時間を調整して、朝食も夕食も作って息子と過ごしてくれましたし、
当時5年生だった息子は、自分のことは自分でし(私が寝る前に読んでやっていた本を一人で読み、毎晩つけてやっていた保湿クリームを自分でてんこ盛りに塗り)、
父子二人の時間は充実していたようです。
帰国後、お世話になったフィンランド人の女性に「母親初海外出張成功!」を報告すると
「それは良かったですね。でも、家を空けることについて罪悪感を持つのが「母親だから」なのであれば、それはおかしい。育児をする権利も、仕事をする権利も父母両方にあります。本来、父が不在になるのも母が不在になるのも、同じはずですよ」
と言われて、ガ~ン!
フィンランド式を取り入れるには、意識変革がまだまだ必要でした・・・


フィンランドで「幸せ」のヒントをもらったこと、
我が子の成長と、夫のありがたさを感じられたこと、
そして母親になっても仕事をあきらめなくていいんだと知ったことの記念が、
この「FINLAND」のマグカップ。
なみなみつぐと500ミリリットル近く入る大ぶりのマグは、
飲み物を入れて持つとずっしりと重く、
それが責任と喜びの重さだと感じられもするのです。