8月29日 田中毅

8月はバスケットボール男子日本代表が出場するアジアカップの中継のため、中東サウジアラビアに行ってきました。サッカー中継やプライベート旅行などで何度も訪れていた中東ですが、サウジアラビアは初めて。今回のエッセイでは、「私が見たサウジアラビア」をご紹介したいと思います。

海外出張に行く際は私はまず書店に行き、ガイドブックを買い漁ります。しかしサウジアラビアはガイドブックがほとんどありません。電子書籍を数冊とインターネットで情報をかき集め、約3週間の出張に出発しました。

我々中継班が向かったのはサウジアラビア第2の都市ジッダ。ダイバー憧れの海とも言われる紅海沿岸の町で、イスラム教の聖地メッカまでは車で1時間、巡礼の玄関口として世界中から人が集まります。空港に到着し税関を抜けると円柱の巨大な水槽がお出迎え。中には大きなサメが数匹、回遊していて、いきなり異空間な雰囲気へと持っていかれます。到着したのは未明の4時半、バスでホテルに向かうために空港の外に出るとびっくり。夜明け前にも関わらず、まるでサウナに入ったかのような感覚に襲われます。気温の高さはもちろん、驚いたのはその湿度。掛けていたメガネが一瞬で曇り、全身から汗が吹き出します。サウジアラビアは砂漠のイメージがありましたが、ジッダは海沿いのために湿った空気が流れ込み、年間を通して湿度が高いんだそうです。

ホテルで仮眠をとり、取材のため体育館へ。もちろん、昼は半端なく暑いです。肌を突き刺すような陽射しは、5分と外にいることを許しません。私は毎回、出張には必ずジョギングシューズを持っていくのですが、結局日本に帰るまで、一度もスーツケースから出ることはありませんでした。

そして“中東あるある”なんですが、「外は灼熱、中は極寒」。ホテルもショッピングモールも体育館も、電気代を気にすることなく、とにかくクーラーによってキンキンに冷えています。外がサウナなら、中は水風呂のようです。(整うことはないのですが)。以前、UAEやカタールで同じような経験をしたことから、薄手のダウンを持参し、室内では常にそれを着用していました。持って行っていなかったら体調を崩していたかもしれません。

食事ですが、これは本当にどれを食べても美味しかったです。宗教的な理由から豚肉はないので、肉と言えば羊、牛、鶏です。ラム好きの私には天国でした。特に美味しかったのは「マンデ」と言う料理。土の中の窯で羊肉や鶏肉を蒸し焼きにし、ご飯と一緒に食べるもので、私も地元の方と同じように右手で肉をほぐしながら頂きました。ローストされた羊肉はホロホロで香りも良く、美味しかったなぁ・・・。ちなみにアルコールはありません。UAEなどではホテル等でお酒を飲める場合もありますが、サウジアラビアはどこに行ってもお酒を飲むことができません。一方でスーパーでは見たことのない数のノンアルコールビール、ノンアルコールワインが並んでいます。普通のビール味から、イチゴやオレンジなどの風味が付いたものまで、色々なものがありました。

そして、どこに行っても地元の人が気さくに話しかけてくれたのが嬉しかったなー。毎回「中国人ですか?」って聞かれましたが。ご飯屋さんでは「日本人です」と答えると、「これ食べてみろ、あれ食べてみろ」と色々なものを試食することが出来ました。観光ビザが解禁されたのが2019年なので、まだ我々のような観光客が珍しいのかもしれません。実際に町一番の土産屋が集まる通りを歩いていても、しつこい客引きなどに会うことは一度もありませんでした。治安もとても良いです。

石油資源への依存から舵を切って6年前に観光の扉を開き、豊富な資金を元に数々の大型イベントを招致しているサウジアラビア。2034年にはサッカーのワールドカップもサウジアラビア開催が決まっています。今後ますます、世界中から視線が注がれそうです。