2月7日 山本里咲

福井県に行きました。

祖母が暮らしている場所です。

いま、その帰り道にこのエッセイを書いています。

ああ、寂しい。

 

わたしは千葉県の出身ですが、「帰省」というと

福井県を指すような気がしています。

なんでも、生まれた瞬間は福井県にいたそうで。

多感な小学生の時分は毎春夏秋冬休みには決まってここへ来て、無邪気に遊び回ったものです。

 

2月、雪に包まれたこの町はとても静かでした。

積もった雪が陽に照らされて、ポタポタと

時を刻むように溶け落ちる音だけが響いていました。

近くにある駅の、何度も聞いた発車メロディすらも

優しい音に聞こえました。

 

真冬にしては少し風通しの良い家は、

懐かしく、安らぐ音と香りがします。

石油ヒーターの音やほうじ茶の香り、

伊予柑の香り、食器を触る音、

階段を上がる音、時代劇の侍の声...

 

この、ささやかな日常の音や香りに癒され、

心地良く感じるようになったのはいつからでしょうか。

外は寒いけれど、心が温かい時間でした。

 

「またすぐ会おうね」

この言葉がだいすきです。

何度も心の中で唱えながら、この冬もまた東京へ帰ります。

 

もうすぐ、わたしの日常が始まります。

雪の音のように静かに、でも確かに心を温めてくれる

だいすきなものが沢山見つかる予感がしています。

 

※写真は、文章の中に出てくる伊予柑です。

 

​​​​​​