福井県に行きました。
祖母が暮らしている場所です。
いま、その帰り道にこのエッセイを書いています。
ああ、寂しい。
わたしは千葉県の出身ですが、「帰省」というと
福井県を指すような気がしています。
なんでも、生まれた瞬間は福井県にいたそうで。
多感な小学生の時分は毎春夏秋冬休みには決まってここへ来て、無邪気に遊び回ったものです。
2月、雪に包まれたこの町はとても静かでした。
積もった雪が陽に照らされて、ポタポタと
時を刻むように溶け落ちる音だけが響いていました。
近くにある駅の、何度も聞いた発車メロディすらも
優しい音に聞こえました。
真冬にしては少し風通しの良い家は、
懐かしく、安らぐ音と香りがします。
石油ヒーターの音やほうじ茶の香り、
伊予柑の香り、食器を触る音、
階段を上がる音、時代劇の侍の声...
この、ささやかな日常の音や香りに癒され、
心地良く感じるようになったのはいつからでしょうか。
外は寒いけれど、心が温かい時間でした。
「またすぐ会おうね」
この言葉がだいすきです。
何度も心の中で唱えながら、この冬もまた東京へ帰ります。
もうすぐ、わたしの日常が始まります。
雪の音のように静かに、でも確かに心を温めてくれる
だいすきなものが沢山見つかる予感がしています。
※写真は、文章の中に出てくる伊予柑です。