1月16日 ラルフ鈴木

「高校サッカーに思いを馳せる」


第93回全国高校サッカー選手権が幕を下ろした。
見事、延長戦を制し、日本一に輝いたのは、石川県代表の星稜高校。
去年、同じ決勝の舞台で、延長戦で敗れた雪辱を見事に果たした。
テレビの前でも多くの人がこの激戦に熱視線を送っていたことだろう。
 
「埼玉スタジアム2002」で初開催となった決勝戦。
入場者数は、実に、4万6000人超。
 
正直、驚いた。
 
日本代表戦でもないし、海外の超一流クラブの試合でもない。
ましてや、プレーしているのは、誰もが知るスター選手ではなく、
まだわずか16~18歳の無名の高校生たち。
 
さらに、「埼玉スタジアム2002」は、
国立競技場ほどアクセスは良くなく、決勝戦当日は、
晴れてはいたが、真冬の寒風が吹きずさんでいた。
 
それにしても、である。
 
試合開始、3時間前には、当日券を求め、6000人が列をなし、
バックススタンドの観客席は最上段まで埋まり、
予定のなかったメインスタンドの2階席も解放された。
 
放送席から見たその光景に、私は心を揺さぶられた。
 
高校サッカーの何が、ここまで人々の心を惹きつけるのか。
 
そこには、スポーツの基本である「勝敗」の域を超える、
高校サッカーならではの「理由」があるのだと思う。
 
93回の歴史が積み上げてきた大会の、「価値」。
限られた3年間のすべてを部活に注いできた選手たちの、「思い」。
そして選手を支える、監督、家族、仲間たちとの、「絆」。
 
これらこそが、16年における高校サッカー取材で、私が感じた理由である。
 
ピッチには、ベンチには、スタンドには、それぞれ、
その試合に向けたストーリーがあり、
選手たちのプレーを通じて、実況を通じて
人々がそのストーリーを想像し、共有し、共感し、一喜一憂するからではないか。
 
私はアナウンサーとして、取材を通して、監督、選手、スタッフ、家族のみなさんから
そのストーリーを知り、伝えることができることを心から嬉しく思う。
 
入社した際には想像もしなかった、100回大会が見えてきた。
そこに辿り着くまでには、どんなストーリーが待っているのであろうか。
 
40歳となり、感傷的な気持ちに浸ることが増えてきてしまった。
さぁ、気持ちを切り替え、94回に向けて動き出そう。
 

「試合開始45分前の放送席からの光景」