12月24日 井田由美

一度だけですが、外国でクリスマス・イブを過ごしたことがあります。
 
1981年、入社2年目の12月、「世界にかける橋」という番組で、
ドイツ(当時は西ドイツ)・ケルンの、国際ラジオ放送局を取材しました。
 
大聖堂で知られるケルンの街。
イブの日、スタッフと共に、ミサが行われる大聖堂へ。
聖堂内を埋めつくした人々の間から、聖職者の帽子の先だけが見えました。
 


街全体が、厳かで、静寂につつまれ、「日本の大晦日のようだ」と思いました。
クリスマスは賑やかで、年越しが静かな日本とは逆に、
欧米は、大晦日(ニューイヤーズイブ)にお祭り騒ぎをしても、
クリスマスは祈りと共に、一年を振り返り、未来に思いを馳せる日なのかも知れません。
 
取材した国際ラジオ放送局には、様々な人種や国籍の人々が行き交い、さざめいていました。
アフリカのシエラレオネから研修に来ていた青年も。
シエラレオネの人と言葉を交わしたのは、私にとって初めてのことだったと思います。
 
あれから30年余り。
ベルリンの壁が崩れ、ソ連が崩壊し、冷戦は終わりを告げましたが、
世界は新たな対立に、おののいています。
10年を超える内戦に苦しんだシエラレオネの青年は、今、どうしているでしょうか。
 
あの時の国際ラジオ放送局の明るい雰囲気を思い出すと、
多様であること、違っていることは、困難を抱えつつも、
豊かさにつながっているのではないか、と、かすかな希望もわいてきます。
 
来年が、皆様にとって良い年になりますように。