11月27日 町田 浩徳

「魔女の一撃」を初めて受けたのは今から8年前。
32歳の時だったと思う。
 
当時、私は休日を自宅のマンションでくつろぎながら過ごしていた。
昼下がりに、乾いた洗濯物を片付けるためソファーの上にあった靴下を手に取る。
その瞬間に喰らった。
 
魔女の一撃だ。
 
一瞬、何が起きたか自分で理解が出来なかった。
体が固まり身動きができない。
うなり声を上げながらその場に崩れ落ちた。
 
5分経過...10分経過...。
まったく状況は変わらない。
「このままではマズイ」と思った私は病院へ直行することを決断した。
頭が混乱していたのか冷静だったのか分からないが
「魔女の一撃って保険きくのかな」などと変な心配をしていた。
ただ、身動きができないから着替えもできないし、そのままの服装でも
玄関へさえ自分で移動することができない。
救急車を呼ぼうかと考えたが
「魔女の一撃で来てもらうのは申し訳ない」とやはり冷静(?)。
 
悪戦苦闘しながら必死の思いで部屋を出てマンション前の通りに出た。
要した時間は30分。普段なら1分もかからない移動なのに。
激痛の為、10cmずつ体を動かしながらタクシーに乗り込んだ。
タクシーの運転手さんに聞かれる。
 
「お客さん、大丈夫ですか?」
「どうやら魔女の一撃にやられました」
「......。大変ですね。」
 
そうこうしているうちに病院へ到着。
診察を受けて薬を受け取り、いざ会計へ。
日本の健康保険ってすごい。
ちゃんと「魔女の一撃」でも適用された。
 
ここでちょっと脱線。
去年、プロレス実況のあとに声がかすれて
何日か長引いたため医者に診てもらった。
 
「声帯はねぇ、筋肉と一緒で加齢とともに衰えていくもの。
潤いも無くなっていくから、こまめに水分補給しながら実況しないとダメだよ。
学生時代は、お酒飲んでカラオケで絶叫して声をからしても
翌日には治っていたでしょ?それは声帯が若かったから。
今はもう、いたわってあげないとね」
 
本線に戻ろう。
 
「魔女の一撃」も加齢が関係するのか?
医者に聞いてみた。
 
「加齢や運動不足なども原因と言われていますが
はっきりとした要因はわかりません。
ただ、気を付けなければいけないのは、若い人にも
起こりうるということ」
 
防ぎようがあるようで防ぎきれない(?)
そんな「魔女の一撃」は忘れたころにやってくる。
11月上旬、日米野球のためメジャー軍団が来日した大阪で
「四番の一撃」ではなく、「魔女の一撃」に襲われた。
ただ、こちらとしても毎回黙ってやられているわけにはいかない。
反撃はできなくとも、傾向と対策はバッチリなので
対処法はいくつか用意してあった。
いや、むしろ共存というのか、一生うまく付き合っていきたいと思っているのだ。

 
「おれ、魔女と付き合ってるんだ」 
口には出さないが、密かに私はそう思っている。
ちなみに西洋では「ぎっくり腰」のことを
「魔女の一撃」というらしい。