6月21日 山本 紘之

6月4日、5大会連続のワールドカップ出場を決めたサッカー日本代表。
歓喜に沸くサポーターたち。
4年に一度しか来ないその瞬間、私は埼玉スタジアムにいた...。

という出だしであれば、このエッセイも少しは恰好がつくのですが、
その時間私は、CS放送の番組でニュースを伝えていました。
その瞬間を現場で味わうことはできませんでしたが、
報道フロアでしっかりと、心は熱く顔は冷静に、喜びを噛みしめていたのです。

私もかつて10年間、本気でサッカーに取り組んでいました。
中学の部活から始まり柏レイソルの下部組織を経て、 明治大学体育会サッカー部で幕を閉じた私のサッカー人生ですが、
社会人になってからは伝える側に身を置き、試合や選手の取材に奔走しております。
担当する夕方の「news every.」カルチャー&スポーツでサッカーネタを伝える時は、
違った形で携われる喜びを感じながら、そしてどこかに「自分ならではのこだわりを持って伝えよう」という使命感を(勝手に)持ちながら読んでおります。

ところが最近、スタジオで原稿を読んでいる私の姿をスタッフが見て、
「なんでそんなに恐い顔して読んでるの?スポーツ、サッカーなんだから楽しく読めばいいのに...。」と一言。
ハッとしました。
原稿を持つ手には力が入り、肩はいつもより上がり目、
眉間に皺を寄せ、映像が流れているモニターと原稿を交互に睨みながら伝えていた私。
確かに客観的に見たら、何か思いつめた恐い表情です。
そんな状態ですから、ミスも出ますし、臨場感も今一つ...。
猛省しました。
お陰様で、今では(テレビに映らないのに)にこやかな表情で、原稿を読んでおります。
若干、気持ち悪いとも言われます。でも気にしません。

そんな経験を経て、ふと感じたことは、
サッカーの"試合"とアナウンサーの"本番"は似ているということ。
「楽しまなければ、いいパフォーマンスは発揮出来ない」ということ。

もちろん万全の準備をした上での話ですし、
時には辛い準備をしなければ本当の楽しさは訪れません。
だからこそ、本番は緊張しますし、大きなプレッシャーも感じます。
ただ、どんなに良い準備をしていても、緊張やプレッシャーに支配された時には、良い結果は生まれません。
試合中に肩に力が入り恐い顔でプレーをしていては、入るゴールも外します。
(現役時代、何度チームメイトから非難を浴びたことでしょう...。)
前述のスタジオのニュースも然り、
実況においても、緊張で硬くなっていては、目の前で起こっている本当の楽しさを見落としてしまいます。
何が楽しいのかを、誰よりも早く、真っ先に発見出来なくてはいけません。
そのためにはまず自分が目の前の試合を楽しまなければいけません。
よく見ると、うちの先輩たちはみんな、その達人たちです。

自分はまだまだ、まだまだ入社3年目の青二才です。
一丁前に語れるものもほとんどありませんが、
こうした出来事を経験することで少しずつでも発見・成長していければと思っております。
目の前には素敵な先輩方がたくさんいらっしゃるのだから、見て学んで楽しんでいかなくてはいけません。

日本代表も、W杯に向けた勝負の一年が始まりました。
私自身も、この一年間で技術面とメンタル面の両方を同時に成熟させていきます。
まずは「ビッグチャンスを外す決定力不足」を解消したいと思います。
いつか世界の舞台で「ゴーーーーール!!!!!!」と叫べるように。