9月3日 森圭介

5歳の息子が幼稚園から帰ってきた。
汗びっしょりだ。暑かったのだろう、顔が赤い。
ごくりと水を飲んだ彼に聞いた。


父「今日の幼稚園、どうだった?」
息「たのしかった」


父「何がたのしかったの?」
息「いっぱいあそんだこと」


父「何して遊んだの?」
息「サッカーしたり、おにごっこした」


父「サッカーのどんなことが楽しかったのかな」
息「〇〇くんからパスがきて、シュートした」


父「そのシュートはどうなったの?」
息「きまったよ。ビューンってゴールにはいった」


父「じゃあ、それが今日一番嬉しかったんだね?」
息「ううん。おにごっこ」


父「え?なんで?」
息「え?はしって、おににつかまらなかったからね」


父「そっか。速く走れたことと、捕まらなかったこと、どっちが嬉しかった?」
息「はやくはしれたこと!」


言葉を掘り下げていくと、木彫りの彫刻みたいに見えなかった感情が見えてくる。
彼が楽しさを感じていた根源は、速く走れたことだった。


誰かより速く走れた小さな優越感かもしれないし
誰かに褒められた承認欲求の充足かもしれない。


それでもこれから彼は
たくさんの楽しいことに出会って
自分の好きなことを見つけていくんだろうなと思う。
見つけていって欲しいと願う。


長く生きていると
日常の一つ一つに心動かされることなく
1日を過ごすことができてしまう。
昨日と同じような今日が来て
去年の今頃と同じことを今年もする。
3年前と同じ音楽を聴いて
同じメンバーで同じ話をして同じところで笑っている。


自分に問う。


今日はどんな日だったろうか。


今日一番嬉しかったことはなんだったろうか。


明日は早く家に帰って息子とかけっこをしてやろう。
本気で走って圧倒的に勝ってやろう。
いつか負ける日が来る。
その日に汗びっしょりで飲むビールはうまいだろうな。