3月7日 森 圭介

いくつになってもね、嫌なものは嫌なんですよ。
そう、それは絶叫マシーン。


ガタガタと上がって、ゴーッと下がって、ビューンといくアレですよ。


そもそも私は平穏な毎日を過ごすために生きているわけで、
時間とお金をかけて恐怖をわざわざ手に入れるということ自体
全く理解ができないわけです。


しかしこれだけ世界中に絶叫マシーンがあるということは
そこに需要があることは確か。
それが自分の家族であるということも
決して低い確率ではないわけです。


ウチに限ってないだろう。
その根拠のない自信が打ち砕かれる日が
ついにやってきてしまいました。


遊園地に行くことになったのです。


家族を乗せ、ハンドルを握ります。
最高速度時速130kmのマシーンに乗るために
時速80kmで高速道路をひた走るのです。


次第に近づいてくるコースターの巨大な骨組み。
かすかにこだまする乗客の悲鳴。


富士山の麓で私は覚悟を決めていました。
私の恐怖なんて構いやしない。
家族が楽しいならええじゃないか、と。


子供の手を引いて、乗り場へ向かいます。
空いているようで、待ち時間はほとんどありません。


では行くぞ。
父の背中を見せてやる。
その瞬間でした。
看板にあった文字は


「身長制限 110cm」


え?


長男の身長は105cm。


あっぶねぇ、あっぶねぇ!


今回はなんとか免れた。
でも、次くるときはもう逃げられないだろうな。


時折悲鳴で軋む骨組みを見上げながら
途方に暮れる父なのであった。