「あ、自分で切りましたか?」と美容師さんに見抜かれてしまったことがある。
月に一度、美容院で髪をカットするのだが、ショートヘアなので、3週間も経つと、毛先や前髪が気になってくる。髪質が硬く、微妙な癖もあるので、不器用な私にはうまくまとめられない。ある時、思い余って、伸びてしまった前髪に、ひょいとハサミを入れたら…
「あー、切るんじゃなかった!」
鏡の中には、還暦を過ぎた「ちびまるこ」の情けない顔。
美容師さんの手つきを思い出しながら、毛先を3ミリほど切っただけなのに、印象が全く違う。美容師さんは、流れるような“そぎ切り”、私は、ぶっつりとした“輪切り”。毛先を雑にあつかうと、髪型全体が台無しになるのだ。
ふと、「話すときの、語尾に似ている」と思った。
同じことを言っても、ふんわりと物柔らかに聞こえる人と、きつく、とげとげしい感じに聞こえる人がいる。
「あなたはどう思いますか?」
という問いかけも、語調によって、素直に自分の意見を述べたくなる場合と、何だか答える気になれない、と感じる場合がある。
何が違うのか?
相手を尊重する、という気持ちと姿勢が備わっているか。口調はその表れだが、具体的には、声の強さや、テンポ、間合い、そして、語尾。
妙なクセがなく、流れるように自然でありながら、真面目でひたむきな語尾の響きがあれば、インタビューはすんなりと続いていく。
丁寧なばかりでなく、時にはカジュアルでぞんざいなくらいの語尾が、相手との距離を縮めることもある。隠されている情報を引き出そうというときには、相手の気持ちをざらつかせ、挑発するような語尾の響きが必要になってくるかもしれない。
語尾は、演奏の最後の一音、体操競技の着地。その印象と影響は、思いのほか大きい。
