2月17日 「さん」づけ

美味しいものを紹介するとき、店の名前(固有名詞)に「さん」をつける番組が増えてきた。

「〇〇屋さんの(○○軒さんの、○○亭さんの)△△は絶品!」

テレビを見ながら「食べてみたいなァ」と思いつつ、この「さん」は必要かしら?と、いつも気になる。リポーターが現場で言うのならともかく、ナレーションでは、

「〇〇屋の△△は絶品!」

で、十分ではなかろうか。

 

好きなグループ名を尋ねられた時に、「◇◇◇さん」と、「さん」をつけて答える若い芸能人も多くなってきた。

同じ世界の先輩に対する敬意や、ファンとしての憧れの気持ちを表しているのだろうが、この「さん」も、つけなくていいと私は思う。

「ビートルズさんが好きなんです」という発言は聞いたことがない。

ということは、「◇◇◇さん」は、そのグループに対する距離の近さも表しているのだろうか。それとも、「さん」をつけることで、先輩のことを丁寧に話した、という安心感を得たい若者心理であろうか。

 

「会社名に『さん』はつけないものだけれど、たとえば各局が集まる会合で、『日テレさんはどうですか?』『NHKさんのお考えは?』と、『さん』をつけて呼び合うのは、感じがいいと私は思いますよ」

と、新人研修中の雑談で、アナウンス部の上司が話していたのを覚えている。

呼びかけならば、それもいいと思う。

そういえば私も、出前を取る時、「もしもし、〇〇屋さん?」と電話口で、店の名前に「さん」をつけている。

 

食品の過剰包装とはちがって、言葉は、店名に「さん」をつけたからゴミが増えるというものではない。しかし、言葉にも“過剰包装”の弊害はある。敬意表現はエスカレートしていく傾向がある。何にでも「さん」をつけていると、「さん」をつけない、本来の言い方が、そっけなく、礼を失した感じに受け取られる、ということになりかねない。

言葉、ことに情報を伝える言葉は、簡潔が一番、と私は思う。