今年10月、BS日テレで放送した特別番組「皇室と戦後80年~平和の希求・記憶の継承」のナレーターをつとめた。
硫黄島、沖縄、広島、そして、戦後のモンゴル抑留…当時を知る高齢の方々が、声を振り絞るようにして、つらい体験を語ってくれた。言わずして、この世を旅立つことはできない、という熱意と覚悟で、後を引き継ぐ世代に、「平和」の二文字の稀有なる重みを託したのだと思う。
広島では「伝承者」と呼ばれる若者たちが、研鑽を積み、被爆体験者の話を聞いて、語り伝える活動を続けている。
「語り継ぐ」ことの大切さを終戦記念日のお言葉でも述べられていた天皇陛下は、広島訪問の際、懇談で若い伝承者を励まされた。
体験と記憶のタスキを、つなぐことの大切さ…。
戦後80年の今年は、さまざまな催しがあった。
東京都内でも、終戦間近の惨状を描いた演劇の上演、大きな美術館の展覧会から、大学や区役所の、規模は小さいけれども、丹念に集めた資料の特別展まで…見ることによって、戦争を知らない世代の私にも、あらためて、「戦争だけはしてはいけない」という、祖父母世代の人々の声が、よみがえってきた。
メディアの仕事は、戦争を語り継ぐことではなく、今も埋もれている事実を発掘することだ、と、リタイアしてなお取材を続ける、ある先輩記者は、現役世代を叱咤激励する。
その言葉も噛み締めつつ、アナウンサーの私は、語り続けていきたい。
「記憶」は継承することができる、と信じて、今年も、来年も。
(※特別番組「皇室と戦後80年」は、12月27日(土)12:00~13:55
BS日テレで、アンコール放送いたします。ぜひご覧ください。)
