みどころ

《メアリー王女、チャールズ1世の娘》アンソニー・ヴァン・ダイク 
1637年頃
Given in memory of Governor Alvan T. Fuller by the Fuller Foundation

本展のテーマ

古今東西の権力者たちは、その力を示し、維持するために芸術の力を利用してきました。威厳に満ちた肖像画は権力を強め、精緻に描写された物語はその力の正統性を示します。また、美しい工芸品は彼らの宮廷を彩り、ときに外交の場で活用されてきました。時の一流の画家や職人につくらせた芸術品は、今も見る人々を圧倒する荘厳な輝きを放っています。また、力をもつ人々は、自らも芸術をたしなんだほか、パトロンとして優れた芸術家を支援しました。その惜しみない支援によって、数多くのすばらしい芸術作品が生み出されたのです。さらに、多くの権力者たちは、貴重な作品を収集し手元におきました。彼らが築いたコレクションは、今日の美術館の礎ともなっています。本展では、エジプト、ヨーロッパ、インド、中国、日本などさまざまな地域で生み出されたおよそ60点の作品をご紹介します。私たちが鑑賞する芸術作品が本来担っていた役割に焦点を当て、力とともにあった芸術の歴史を振り返ります。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年に中止となった本展。いよいよ待望の開幕です。

みどころ

highlight 01

当初の予定から2年越しで開催される本展では、世界有数のコレクションを誇るボストン美術館からエジプトのファラオ、ヨーロッパの王侯貴族から日本の天皇、 大名をはじめ、古今東西の権力者たちに関わる作品を紹介します。彼らが時に政治や外交に利用し、時に愛で、時に自らがたしなみ育んだ美術品およそ 60点が展示され、その半数以上が日本初公開となります。

  • ボストン美術館内
    ©Tetsu Wakabayashi/NTV
  • 《モンスーンを楽しむマハーラージャ、サングラーム・シング》
    インド北部(メーワール、ラージャスターン地方)、ムガル帝国時代、1720-1725年
    Gift of John Goelet
  • 《メアリー王女、チャールズ1世の娘》
    アンソニー・ヴァン・ダイク
    1637年頃
    Given in memory of Governor Alvan T. Fuller by the Fuller Foundation

highlight 02

本展では、海を渡った二大絵巻、《吉備大臣入唐絵巻》と《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》が揃って里帰りを果たします。奈良時代に活躍した学者・政治家である吉備真備の活躍を描いた《吉備大臣入唐絵巻》と、平安時代末期の上皇派と天皇派の対立を背景に起こった平治の乱をテーマに緊迫する戦いの様子を描き、合戦絵巻の最高傑作のひとつに数えられる《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》は、いずれも日本に残されていれば国宝に指定されたと考えられており、「幻の国宝」とも呼ばれています。

《吉備大臣入唐絵巻》は全期を通して、4巻揃って展示されます。

《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》(部分)
鎌倉時代、13世紀後半
Fenollosa-Weld Collection
《吉備大臣入唐絵巻》(部分)
平安時代後期-鎌倉時代初期、12世紀末
William Sturgis Bigelow Collection, by exchange

highlight 03

《マージョリー・メリウェザー・ポストのブローチ》
オスカー・ハイマン社、マーカス社のために製作
アメリカ、1929年
William Francis Warden Fund, Marshall H. Gould Fund, Frank B. Bemis Fund, Mary S. and Edward Jackson Holmes Fund, John H. and Ernestine A. Payne Fund, Otis Norcross Fund, Helen and Alice Colburn Fund, William E. Nickerson Fund, Arthur Tracy Cabot Fund, Edwin E. Jack Fund, Frederick Brown Fund, Elizabeth Marie Paramino Fund in memory of John F. Paramino, Boston Sculptor, Morris and Louise Rosenthal Fund, Harriet Otis Cruft Fund, H.E. Bolles Fund, Seth K. Sweetser Fund, Helen B. Sweeney Fund, Ernest Kahn Fund, Arthur Mason Knapp Fund, John Wheelock Elliot and John Morse Elliot Fund, Susan Cornelia Warren Fund, Mary L. Smith Fund, Samuel Putnam Avery Fund, Alice M. Bartlett Fund, Benjamin Pierce Cheney Donation, Frank M. and Mary T.B. Ferrin Fund, and Joyce Arnold Rusoff Fund
Reproduced with permission.

本展には女性達を彩ったジュエリーも出品されます。なかでも目を引くのは、大粒のエメラルドが施されたブローチ。世界で最も裕福な女性の一人とされたマージョリー・メリウェザー・ポスト(1887-1973)が所蔵していたものです。ポストは父から受け継いだ食品会社の社長を務めながら、4度の結婚をし、駐ロシア大使と結婚していた時期には、絵画など多くのロシア美術を購入しました。そんなポストがお気に入りだったとみられるエメラルドのブローチ。その煌めきを是非間近でご覧ください。このほかにも元ファーストレディのアクセサリーやナポレオンの最初の妻ジョセフィーヌ所縁の磁器など女性達に愛された作品が展示されます。

《平皿(「マルメゾン城の植物のセルヴィス」より)》
フランス、セーヴル磁器製作所
フランス、1803-1804年
Gift of Mr. and Mrs. Henry R. Kravis

highlight 04

日本初公開となる《孔雀図》を描いた増山雪斎(ましやませっさい)は、本名を正賢(まさかた)と言い、江戸時代中期に伊勢長島藩(現在の三重県桑名市長島町)を治めた大名でした。
本展のために修復され、初めての里帰りを果たす《孔雀図》は、雪斎が数多く取り組んだ画題で、代表作と言える質の高さを誇ります。

《孔雀図》
増山雪斎
江戸時代、享和元年(1801)
Fenollosa-Weld Collection

《孔雀図》修復中の様子。
©️Courtesy, Museum of Fine Arts, Boston

ボストン美術館について

ボストン美術館は、1870年にボストン市民をはじめとする有志によって設立され、1876年のアメリカの独立100周年記念日(7月4日)に開館しました。古代エジプト、アジア、ヨーロッパ、アメリカの美術をはじめ、古代から現代までの作品を収集し、そのコレクションの質の高さと百科事典的な幅の広さで知られています。
2020年に設立150周年を迎え、現在も拡張を続けています。2010年には、別館となるアメリカ館が設けられ、南北アメリカ大陸の美術の流れを概観できるようになりました。また、2011年には現代美術のための新しい展示室が設けられ、これまでの作品とのつながりを意識しながら、今日の美術の動向にも触れることができます。開館当初およそ6,000点だったコレクションは、現在では50万点近くに及びます。