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「ボテロ展」をふくよかに味わう10の魔法
2022.06.11
9. 展覧会とセットで見れば、楽しさも倍増! 映画「フェルナンド・ボテロ 豊満な人生」もオススメ!

こんにちは! 今回は、展覧会と並行してBunkamura ル・シネマをはじめ、全国数十館にて、好評上映中の、ボテロさんのドキュメンタリー映画「フェルナンド・ボテロ 豊満な人生」について紹介してみたいと思います。

この映画は、サブタイトルに「豊満な人生」とある通り、ボテロさんの波乱万丈の半生を、作家本人の肉声をはじめ、家族や著名人の証言などを中心に構成された、約90分のアートドキュメンタリー。過去の貴重な写真や映像などもふんだんに盛り込まれ、映像資料としても貴重な作品となっています。

だから、本作は展覧会の予習・復習として効きます。いわば、超ゴージャスな「音声ガイド」みたいなものだと思っていただけるといいかもしれません。

僕も4月末にいち早く鑑賞してきたのですが、ボテロ展との相乗効果はバッチリでした。展覧会での出品作がいくつか映画の中でも登場しているし、映像や劇中音楽の力によって、ボテロさんの世界観へより深く没入できます。ボテロさんの家族に対する愛情や、祖国コロンビアへの思い、そして何よりも芸術に対する飽くなきパッションも感じられ、心動かされるドキュメンタリー映画に仕上がっていました。

ところで、この映画で注目してみたいポイントの一つが、ボテロさんの「彫刻作品」です。

鋳造中のトルソとフェルナンド・ボテロ、1991年

なぜなら、ボテロさんの知名度が加速度的にアップしていったのは、世界各地へ広がっていったパブリックアートや野外彫刻のおかげである、とも言えるからです。

《12歳のモナ・リザ》(※本展には出品されません)にてニューヨークで成功を収めたあと、1973年(41歳時)にヨーロッパへと移住したタイミングで、彫刻制作を開始。ボテロさんは、しばらく絵画制作をお休みして、彫刻制作に没頭します。映画を見ていて、このあたりの集中力はさすが一流のアーティストだな、と思いました。

彫刻制作をスタートして4年後、ボテロさんは満を持してパリで初の彫刻展を開催。ここで手応えをつかむと、以降は絵画と彫刻の二刀流で制作を続けていくことになります。

ピエトラサンタのアトリエでのフェルナンド・ボテロ

1983年にはミケランジェロも制作拠点としていた、大理石の名産地として名高いイタリア・トスカーナ州のピエトラサンタに工房を構え、制作環境が充実。さらに1992年にはパリのシャンゼリゼ通りで、31体の大型彫刻による野外彫刻展を開催。

この時の展示が大きな反響を呼び、その後ボテロさんはニューヨークやワシントン、マドリードなど、世界の様々な大都市で野外彫刻展を展開していきます。2004年には東京・恵比寿ガーデンプレイスで日本初となる待望の彫刻展が開催されました。

映画内では、ボテロさんが手掛けた人物や動物のブロンズ彫刻が世界各国を巡り、人々から愛されている様子が紹介されます。ふくよかで、ユーモアにあふれるボテロさんの彫刻作品は言葉の壁を軽々と越え、世界中で愛される存在になりました。公園や広場では子どもたちにも大人気。まるで大きな遊具のようです。

《猫》 1984年 宮城県美術館

思わず背中に乗ってみたくなるような、巨大な猫の作品。子どもへの安全を配慮して、ボテロさんの許可を得た上で、特別に「ヒゲ」が撤去されました。

そんなボテロさんの彫刻作品ですが、実は本展でも鑑賞できるんです。それが、Bunkamura B1テラス噴水前に特別展示されている、広島市現代美術館が所蔵する《小さな鳥》です。

《小さな鳥》 1988年 広島市現代美術館

館内の展示を見終わったら、ぜひ帰りのエスカレーターに乗る前にテラスの方をチェックしてみてくださいね。

本作は嬉しいことに撮影自由。コラボメニューのオリジナルカクテルと一緒に写してみたり、テラスの1Fや2Fに上がって上空から撮影してみたり、自分なりのお気に入りの角度をみつけて楽しんでみるのもいいですね。

ドゥ マゴ パリでいただける、ボテロ展コラボメニュー「ラズベリーエイド」(1,200円/税込)。本展に出品されている《赤の花》(3点組)をイメージしてつくられた、初夏らしいさわやかなドリンク。
テラス2Fから撮影。周囲360度だけでなく、上からも鑑賞できてしまうのも、上空が吹き抜けになったBunkamuraならではですね。

また、日本各地でも、ボテロさんの彫刻作品は全国10か所以上の美術館や公共の場で見ることができます。展覧会の前後に聖地巡礼してみたので、いくつか紹介してみますね。

《リトル・バード》 1988年 山梨県立美術館

タイトルは違いますが、テラスに展示されている《小さな鳥》と全く同じ作品。設置されて時間が経つにつれ、肌の色が深緑色へと変化してきているのも趣深かったです。

《DOG》 1993年 田町グランパーク

コラム第1回でもご紹介。強風と大雨の中訪問したのですが、雨風に打たれても、じっとおすわりする健気な姿が印象的でした。

《踊り子》 1981年 御堂筋彫刻ストリート(オービック御堂筋ビル前)

大阪の都心にも気軽に見られるボテロ作品があるんです。最寄り駅は地下鉄・淀屋橋駅。それにしても迫力のあるお御足ですよね?!

《馬に乗る男》 1985年 宮城県美術館

ボテロさんがつくる騎馬像には、幼少時に亡くなった父親の姿を重ねられているのだとか。デフォルメ度が高く、ほのぼのとした雰囲気の作品です。

いかがでしたでしょうか? 展覧会でボテロさんの油絵と水彩画を楽しみ、映画ではボテロさんの彫刻作品を堪能する。さらに、レストラン「ドゥ マゴ パリ」やカフェ「LOBBY ROUNGE」で展覧会コラボメニューを味わえば、丸一日Bunkamuraでボテロさんと一緒に過ごすことができますよ!

 

齋藤 久嗣(さいとう・ひさつぐ)

フリーライター。1975年生まれ。IT企業のエンジニア、営業などを経て、41歳のときに「かるび」の名前でブロガーとして脱サラし、その後ライターに。現在は、アート分野を中心に各種メディアでの記事執筆や編集業務、アート系イベントでの広報業務など幅広く活動中。共著に21年『名画BEST100』(永岡書店)など。
Twitter: @karub_imalive

ボテロ展 ふくよかな魔法
BOTERO – MAGIC IN FULL FORM
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急百貨店本店横)
会期:2022年4月29日(金・祝)〜7月3 日(日)