STORY

第十首
なにわづに
2025/9/10

全国大会出場を懸けた最終予選。藍沢めぐる(當真あみ)たち梅園かるた部は、王者・瑞沢と再戦。その読手を務めるのは……大江奏(上白石萌音)!本来読手を務める予定だった中西泉(富田靖子)が、自分の後継者と見込んでいる奏に、あえてこの試合の読手を一任。いついかなる状況でも、読手はすべての選手にとって公正であり続けなければならない。教え子たちの試合で私情を挟まずに読むことができるか。奏にとってこの試合は、中西から与えられた、いわば最終テスト…。

いよいよ試合開始。会場に、奏の序歌が響き渡る。その美しい声色に、観覧席の綾瀬千早(広瀬すず)、真島太一(野村周平)、西田優征(矢本悠馬)、花野菫(優希美青)ら瑞沢OBも思わず聞きほれる。梅園観覧席には、控えに回った奥山春馬(高村佳偉人)、コーチを務めてくれた駒野勉(森永悠希)、顧問の島強(波岡一喜)。父兄観覧席では塔子(内田有紀)、進(要潤)、真人(高橋努)が、梅園の雄姿を固唾をのんで見守る。対峙する梅園と瑞沢、めぐると月浦凪(原菜乃華)――。

「梅園ファイトー!」。めぐるが堂々と声を出す。もう怖くなんかない…。隣には、白野風希(齋藤潤)が、村田千江莉(嵐莉菜)が、与野草太(山時聡真)が、八雲力(坂元愛登)がいる。ここまで一緒に汗を流してきた最高の仲間と、最高の舞台で、今が一番楽しいって思える、最高の時間を…!「みんないつも通り、1枚ずついこう!」。序盤から劣勢の梅園が、めぐるの声で息を吹き返す――!

廃部寸前だった弱小・梅園かるた部が、王者・瑞沢と真っ向勝負!泣いても笑ってもこれが最後…!みんなで行くんだ、全国に!翔べ、梅園!涙の最終回!!

以下、ネタバレを含みます。

梅園対瑞沢の試合は、両者譲らず一進一退の攻防に。大白熱の展開に、観覧席で見守る千早は目を輝かせ、「すごくない?今ここには、かるたを好きな人しかいないんだよ」。選手たちはもちろん、読手として凛とたたずむ奏の姿がうれしい千早。
しかし――。千江莉は篠原(石川雷蔵)の鉄壁のガードを崩しきれず、瑞沢が1勝。さらに八雲も音(瀬戸琴楓)に敗れ、瑞沢が2勝目…。うつむく八雲の背中を、めぐるがポンポンとたたく。「ナイスファイト、2人とも。見てて、私たち3勝してくるから。梅園はこっからだよ」。風希と草太が「おうっ!」と呼応する。そんなめぐるの姿を見た瑞沢のエース・懸心(藤原大祐)は、名人・新(新田真剣佑)の言葉を思い出す――「団体戦で本当に怖い相手は、かるたが強いだけじゃない。仲間ごと強くしていくんや」――。懸心が珍しく声を出す、「…いくぞ、瑞沢」。懸心の成長に、顧問の千早は目を細め――。

そんな中、同時進行していた北央VSアドレの試合が終了。北央が勝利したことで、梅園は瑞沢に勝てば全国大会へ行けることに!春馬は「翔が望みをつないでくれました!」と歓喜し、北央のエースで弟の翔(大西利空)とアイコンタクトを交わす。

めぐる、風希、草太、どの盤面も瑞沢有利。しかし、諦めなければ、絶対無理なんてことはない――。太一にそう教わった風希は「青春は、時間を表した言葉じゃない。『どう生きるか』ってことなんでしょ、真島先生」。風希が感覚のない右手で札を払う!めぐるも、草太も続く!持ち札が多く残っている梅園側の出札が続き、梅園が怒涛の追い上げ!4枚差、3枚差、2枚差、そして、1枚差!ついに、3組の運命戦に!…がしかし、めぐるは盤面を見て絶句!めぐる、風希、庭野(髙橋佑大朗)の陣に『よをこめて』の取り札があり、凪、懸心、草太の陣に『めぐりあひて』の取り札がある…。運命戦は自陣を取る方が圧倒的に有利。あと1勝すればいい瑞沢は、どっちの札が読まれても勝てるように、持ち札を分けたのだ。絶体絶命の梅園。見守る春馬たちも、さすがに負けを覚悟するが…。

最後の1枚…。札が読まれた瞬間、草太が猛スピードで庭野の陣に手を伸ばす……が、空札!寸前で手を止める草太。首の皮一枚つながったものの、打つ手のない梅園…。次の札が読まれる。再び猛スピードで手を伸ばす草太。また空札。……と、草太が「梅園、1勝!」。なんと、草太の動きに釣られ、相手の庭野がお手つき!これでめぐると風希の陣に『よをこめて』の取り札、凪と懸心の陣に『めぐりあひて』の取り札が残り、絶体絶命の状況から一転、勝負は五分五分に!草太の気迫が奇跡を起こしたのだ!すると、めぐるが唐突に、敵陣目掛けて素振りを始める。それは、梅園みんなで決めた、敵陣を攻めにいく合図…。自陣を守った方が無難だが、『めぐりあひて』を攻めるなら今しかない。
奏は、向き合うめぐると凪の姿に、紫式部と清少納言を重ねる。千年前、2人は同じ時代を生きながらもすれ違った。でも、時代を超えて巡り会えたなら、今度こそ最高の友達になれる…。覚悟を決め、次の札を手に取る奏。その目が、驚きに変わる…。直後、突然照明が落ち、会場は真っ暗に…。試合が中断する中、読まれる札を見てしまった奏の手が震える。そんな奏を、中西がじっと見つめる。必死に平静を装う奏。でも、みんなで頑張った日々を思い出すと、どうしてもこらえきれない涙が一筋、頬を伝う…。そのわずかに乱れた呼吸を、背中で感じるめぐる。――大丈夫だよ、先生。どんな結果になっても私は大丈夫。今は信じられるから。失敗も、成功も、希望も、後悔も、その全部が積もって、今の私なんだって!――再び照明がつき、競技が再開。奏の口が『め』になりかけた瞬間、札に向かって勢いよく飛び出すめぐると凪、風希と懸心!
会場中が身を乗り出して見つめるその先で、めぐると風希の手は僅かに「めぐりあひて」には届いておらず――
4勝1敗で、瑞沢の全国大会出場が決定。会場に、両チームをたたえる拍手が鳴り響く。立ち上がれない梅園のもとに、読手を終えた奏が駆け寄る。めぐるは途端に顔をゆがませ、周囲の目もはばからず、子どものように泣きじゃくる。1年前の先輩たちを超えるくらい、みっともなく…。

大会終了後、会場でそれぞれの時間を過ごす、梅園、瑞沢、北央、アドレ。風希と懸心が連絡先を交換したり、春馬と翔が写真を撮ったりする姿も――
会場の外にでた奏と梅園部員。そこには奏を待つ瑞沢OBたちの姿が。
奏が瑞沢OBのもとに駆け寄ると、千早が「カナちゃん、めちゃくちゃ良かったよー!私も頑張る!カナちゃんが読んでくれるまで、詩暢ちゃんとクイーン戦やる!」。今すぐかるたをしたくて仕方がない千早。笑い合う瑞沢OB。みんなと一緒にいる奏の顔は、高校生の頃とちっとも変わらない。そのリラックスした表情を見ためぐるは、「あ…そっか。先生の宝物って、もしかして、そういうこと?」。めぐるも梅園メンバーの顔を見て、思わず笑顔に…。「ずっとここにあったじゃん。私が探してたもの」――。
帰り道、めぐると凪は、Y字路で鉢合わせ。めぐるは「すっごい楽しかった」。凪も「私もだよ」。紫式部と清少納言。時を超えて再び巡り会った2人は、手を取り合い、1本道へと歩いていく――。

2026年、春。かるたの大会、『咲くやこの花スプリングカップ』に、大学生になっためぐるの姿が。団体戦に挑むめぐるの隣には、凪と千江莉の姿も。相手チームには、風希、懸心、草太。他にも春馬、翔、黒田(橘優輝)のチームや篠原、音、有馬(大友一生)のチームと戦っていて…。読手を務めるのは、奏。その左手薬指に、駒野からもらった指輪が光る。札を手に取り、読み上げる奏。「めぐりあいてー」。瞬間、めぐるの払った札が、勢いよく翔んでいく――。