STORY

第四首
おくやまに
2025/7/30

新生・梅園かるた部、初の強化合宿の日がやってきた。今日から2泊3日、都内屈指の強豪校・北央学園との合同合宿。塾の合宿と日程がかぶってしまった藍沢めぐる(當真あみ)も、両親にウソをついてかるた部の方に参加。大江奏(上白石萌音)は「きっと学ぶことはたくさんありますよ!」と初合宿に臨むみんなを鼓舞する。

合宿所に向かう途中、神社の境内で、どこからか鹿の鳴き声が聞こえ、すかさず奥山春馬(高村佳偉人)が一首読む。『奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき』。

合宿所に着いた梅園を、北央かるた部OBの“ヒョロくん”こと木梨浩(坂口涼太郎)と現役北央生が一斉に出迎える。中でもエースで部長の奥山翔(大西利空)は、中学1年でA級に昇格し、将来の名人と目される逸材。そして、実は春馬の双子の弟!……が、C級の兄の存在を恥じる翔は、北央のみんなに知られたくなくて、春馬を呼び出し、「バレそうになったら、秒で帰ってもらうから」。春馬も怒るどころか弟を気遣って、「兄だってことは絶対に言わないから」と約束。2人の会話を偶然聞いてしまっためぐるは複雑な気持ちで…。

完全に小バカにされている梅園は、北央のハードな練習にまったくついていけず、序盤からヘトヘト。休む間もなく始まった団体戦でも、北央のスピードと大きな掛け声に圧倒され、手も足も出ずに惨敗…。「なんであんなに声を出すのかな…」。めぐるには、北央が声を掛け合う理由がさっぱり分からない。一方、与野草太(山時聡真)は「そもそもこっちは4人だし、掛け声以前の問題な気がする」と、人数不足の現状に危機感を抱く。原因不明の目まいが原因で試合に出られない春馬は一人、責任を感じ始めて…。

誰かの役に立つために…!自分に勝つために…!奏も大きな人生の決断を下す!覚悟の第4話!!

以下、ネタバレを含みます。

合宿初日の夜、梅園部員は、大広間を真剣に掃除する北央生を見て衝撃を受ける。息を合わせて畳を拭く北央生たちの真剣な目…。手の動きや姿勢も美しいほどにそろっている…。その一体感に息をのむめぐるに、北央の副将・黒田(橘優輝)が言う、「団体戦は決して個人戦の寄せ集めにあらず」。試合以外の時間も共にし、息を合わせ、互いを分かり合うことで初めてチームが出来上がる。チームが1つになることで個人がいつも以上の力を発揮し、C級の選手がA級の選手に勝つことだって、団体戦なら決して珍しくない…。黒田の言葉に触発された梅園もじっとしていられなくなり、5人で掃除を開始。互いに目を合わせ、隣の人の動きを意識し合い、丁寧に畳を拭いていく…。やがて掃除が終わり、ヘトヘトに倒れ込む5人。千江莉(嵐莉菜)が「明日こそは、絶対にいい試合しよ!」と腕を高く上げる。めぐるも、風希(齋藤潤)も、草太も腕を上げ、「私は選手じゃありませんから」と遠慮する春馬の腕をめぐるがグイっとつかみ上げる。寝転ぶ5人の腕が、天井に高く上がり――。
その夜、めぐるのスマホに父・進(要潤)からメッセージが届く。『勉強頑張って。返事はいらないよ』。塾の合宿に行っていると思い込んでいる両親に、めぐるはなかなか返事が打てず…。何を書こうか迷っているうちに充電がなくなり、電源が落ちてしまう…。

翌朝、神社の境内でランニングをする一同。ふと鹿の鳴き声がして、めぐると春馬は思わず山の方を見る。その鳴き声が『おくやまに』の歌のように、どことなく悲しく聞こえ…。春馬は「群れからはぐれた鹿が、一人寂しく鳴いている、という読み方がその歌にはあるのです。いま鳴いたあの子も、はぐれてしまったのでしょうかね」。遠くを見ながらつぶやく春馬に、めぐるは……。

合宿2日目も、梅園は団体戦で北央に完敗。このまま4人で勝てるほど団体戦は甘くないと悟った草太は覚悟を決め、春馬のいないところで、「東京に帰ったらもう1人部員を探そう」とみんなに提案。東京都予選までのわずかな時間、春馬の目まいが治ることを期待して待つ余裕はない…。草太の苦渋の決断に、みんなも何も言えず…。ところが、その会話を春馬がこっそり聞いてしまっていて――。ショックの春馬は、弟の翔からも「兄弟だとバレる前に今すぐ帰ってくれ」と突き放されてしまう。自分の存在が、みんなに迷惑をかけている…。春馬は強い目まいに襲われ…。

一方その頃、母・塔子(内田有紀)と進は、塾の合宿にめぐるが参加していないことに気付いて困惑。電話もつながらないし、メッセージも既読にならない…。胸騒ぎがする塔子は警察に連絡しようとするが、進が「めぐるはもう高校生だ。あの時とは違うよ。もう少しだけ待ってみよう」――。

春馬が置手紙を残して合宿所を去ってしまった。『気付かなくてごめんなさい、ご迷惑をおかけしました』。手紙を読んだ草太は愕然とし、「春まんごめん。みんなごめん…」。自分を責める草太に寄り添う梅園部員たち。めぐるは北央生たちの前で翔に詰め寄り、「何か知ってるんじゃないですか?春まんが帰ったこと。だって春まんはあなたのお兄さんなんだから!」と暴露!イラ立つ翔は「俺は兄とは認めてないんで。どうせ試合できないんだから、いてもいなくても変わらないでしょ」と言い放ち…。

一方、一人で帰路についている春馬。ふとスマホを見ると、気付かないうちにボイスメッセージが何件もたまっていた。再生ボタンを押すと、梅園のみんなの声が次々と流れ出す。千江莉の声――「どこ行ったバカ野郎!春馬がいなかったら私はどーすればいいんだよ!」。草太の声――「春まんごめんよ。かるた博士の春まんがいないと1人じゃ心細いよ」。風希の声――「俺に色々教えてくれただろ。俺も何かお返しがしたいんだ。戻って来いよ春馬」。そして、めぐるの声――「前に言ってくれたでしょ、焦らなくていいって。いつまでも待ってるから。いつか目まいが治ったら、かるたやろうよ、5人で」――。メッセージを聞いた春馬は、あふれる想いと涙をこらえきれずに…。

合宿所に息を切らせて戻って来た春馬は、「私にも、かるたやらせてください!」。大粒の涙をこぼす春馬を、「当たり前だろ!」と笑顔で迎える梅園。初めて5人そろって、北央との団体戦に挑む!
春馬は目まいに耐えながら試合に臨むが、目の前の翔にバンバン札を取られ、思わず目をつぶる……と、「春まんファイトッ!」。めぐるが初めて声を出した!風希も「春馬ファイトッ!」。千江莉と草太も「がんばれ春馬!」「次は行けるよ春まん!」。みんなの声に背中を押された春馬も「う、梅園ファイトーっ!」。その声に、みんなが「おーっ!」と応え――!息を吹き返した春馬の視線の先には、『おくやまに』の取り札…。春馬の脳裏に、今朝、神社でめぐるに言われた言葉がよぎる――「あの子はもう大丈夫だよ。僕はここにいるよって、勇気を出して鳴いたから。きっと届いたはずだよ。新しい仲間に」――。そして、その時がやってくる。「おくやまに~」。奏の読みが聞こえた瞬間、春馬は全身で札に向かっていき、倒れながらも札をゲット!「ナイスッ!!」と梅園の声が出る!驚く翔を尻目に、梅園が春馬に続けとばかりに次々と札を取る!「こっちも取ったよ!」「キープしたよっ!」。今までとは打って変わって、生き生きとかるたをする梅園!めぐるはハッと気付く、「掛け声って、出すんじゃなくて、出ちゃうのか。自分一人じゃ出ない力が、みんなとなら出せるってことなんだ」――!
結果、梅園はまたしても北央に完敗したものの、1試合を戦い切った春馬をみんなで称える。その光景を見つめる翔…。翔は、北央生の前で「ウソついてすまん…あいつ、俺の兄貴でした」と謝る。春馬はうれしくなって、思わず笑顔になり…。そんな生徒たちの姿に勇気をもらった奏も一念発起。もう一度、専任読手を目指すことに決めるのだった。

その夜、めぐると風希は眠れなくて、2人で夜風に当たる。「てかこの合宿。かるたしかしてないんだけど。でも、たぶん一生忘れなそう」。うれしそうに言うめぐるの横顔に、つい見とれてしまう風希。すると千江莉たちが花火を持ってやってきて、「あっちでやりましょう」「おー!」。それぞれが想いを抱えながら、合宿最後の夜を楽しむ梅園――。
しかし翌朝、事件が起こってしまう。合宿所に塔子と進がいきなり現れ、バチンッ!塔子がめぐるの頬をたたいたのだ…。めぐるを見据える塔子の目には、涙がにじんでいて――。