STORY

第八首
おぐらやま
2025/8/27

東京都予選1回戦。藍沢めぐる(當真あみ)たち梅園は、いきなり王者・瑞沢と対戦。本来の実力差では圧倒的に瑞沢優勢だが、マネージャー・与野草太(山時聡真)のオーダー読みが見事にハマり、ほんのわずかでも梅園に勝てる可能性が出てきた。瑞沢のエース・折江懸心(藤原大祐)と対戦するめぐるも「そう簡単に負けるつもりはないよ」と真っ向勝負を挑みにいくが…。

開始早々、瑞沢が目にも留まらぬスピードで札を取る!観覧席で見守る島強(波岡一喜)と白野真人(高橋努)は「さすがは優勝候補。大丈夫かな…」と不安になるが、草太は「まだまだこっからです」。梅園はこの数カ月で見違えるほど力をつけてきた。チーム唯一のA級選手・八雲力(坂元愛登)を筆頭に、音を捉える感覚に長けた奥山春馬(高村佳偉人)、反射神経とスピードに秀でた白野風希(齋藤潤)、思い切りの良さが光る村田千江莉(嵐莉菜)、そして動きに無駄がなく暗記の精度も抜群のめぐる――。特に最近のめぐるは、草太も「正直、敵に回したくない」と思ってしまうほど急成長を遂げている。それぞれの強みを生かせれば、きっと結果が出るはず…。

一方、京都では、大江奏(上白石萌音)が読手選考会の真っ最中。梅園の結果が気になりつつも、思いを振りきるように目の前の選考会に集中する奏。

ところが、梅園の試合は最悪の展開へ…。頼みの綱である八雲が、見えないプレッシャーに押しつぶされてパニック状態に!何もできないまま対戦相手の月浦凪(原菜乃華)に札をどんどん取られていき、自滅寸前の八雲…。めぐるはなんとかして八雲を落ち着かせようとするが…。さらに、風希の古傷が再発!利き手の右手が言うことを聞かなくなってしまって…。

相次ぐピンチに見舞われて絶体絶命の梅園!めぐるたちの夏は、このまま終わってしまうのか…?
綿谷新(新田真剣佑)と真島太一(野村周平)も登場して最終章に突入!

以下、ネタバレを含みます。

風希の右手の痛みが限界に達し、握力がほとんどなくなってしまう。かるたは一度右手で始めたら、試合中に左手に変えることはできない。これ以上は無理だと判断した真人は、意地でも試合を続けようとする風希につかみかかり。「大事な試合なのは分かるけど、おめぇの右手と引き換えにはできない」と途中棄権を宣言し、風希を連れて病院へ向かう…。
4人で戦うことになった梅園は、瑞沢に5対0で完敗し、意気消沈…。「ごめんなさい、僕のせいで…」と何度も謝る八雲に、めぐるは思わず強い口調で「ヤックモックのせいじゃないよ」と当たってしまう…。梅園は今後、敗者復活トーナメントに回り、勝ち抜ければ3週間後の最終予選に出られる。しかし1度でも負けたら、その時点で梅園の夏は終わる。めぐるたちは風希のためにも絶対に勝ち抜こうと決意するが、責任を感じた八雲が会場から逃げ出してしまい…。

八雲が戻ってこないまま、敗者復活1回戦が始まってしまう。めぐるは、自分が強く言ったせいで八雲を追い詰めてしまったかもしれないと感じ、「私が探してくる。暗記時間の15分、その間に連れて帰って来る」。暗記時間の使い方は選手の自由。それにルール上は試合の途中からでも復帰はできる…。めぐるが八雲を探しに行っている間、草太、春馬、千江莉は3人で踏ん張ろうと奮起。思い返せば、今まで八雲に頼り過ぎていた。そもそも梅園の戦略は八雲が負けることを想定していない。勝って当たり前…。知らず知らずのうちにプレッシャーを与えてしまい、試合中も八雲を一番端の席にして孤立させてしまった。もっと早く気付いていれば…と悔やむ草太は、自分たちで3勝するつもりで敗者復活1回戦に挑む…!

逃げた八雲を、休憩中の凪が発見。「先輩たちは僕に強さを求めてました。かるたが強くない僕なんて、いらないんです」。そう言って肩を落とす八雲に、凪は「梅園さんは君をそんなふうに見てないと思うよ。だってあのめぐるちゃんのチームでしょ?」。めぐると凪が知り合いだと聞いて、驚く八雲。凪は「みんな知らないだけで、本当のめぐるちゃんはスゴい子だから」。子どもの頃から、勉強や運動では凪の方がちょっとだけ上だったが、「めぐるちゃんのはそういうんじゃない。ここぞというときの度胸とか、勝負どころの嗅覚とか、人をひきつける言葉とか。数字には置き換えられない、人としての『引力』があるっていうのかな」。めぐるに底知れない力を感じる凪は、「今回は瑞沢が勝たせてもらったけど、もしめぐるちゃんが本領を発揮したら、次の勝負はどうなるか分からない」。するとウワサをすれば何とやら、めぐるが八雲を探しに現れ、「ヤックモック!」。慌てて逃げようとする八雲の体に抱きつくめぐるは、「ごめんね1人にさせて。みんなヤックモックの帰りを待ってる。試合に出なくてもいいから。せめて私たちの覚悟を見届けてほしい」――。

めぐると八雲が会場に戻ると、草太と春馬と千江莉がまだ頑張っていた。3人の頭には、八雲のお手製鉢巻き。めぐるは「ここで見てて。私たちで勝ってくるから」と八雲に言い残し、試合に戻る。とはいえ、試合開始からだいぶ時間がたち、めぐるの相手の札はかなり減ってしまっている…。劣勢の中、めぐるは目を閉じて一息つくと、ものすごい集中力で暗記を入れていく。その気迫に息をのむ八雲と梅園メンバー。

一方、京都の読手選考会。奏は出番を終え、専任読手たちから講評を受ける。…と、それまで奏と目も合わせようとしなかった中西(富田靖子)が、「1つよろしいかしら。うちの気のせいやなければ、おぐらやまだけ、少し上ずった感じがしたんどす。他の歌は比較的安定していただけに、なぜその歌だけ?」。中西の指摘を、奏は自分でも分かっていたように、「特に申し開くことはございません。もし差が出てしまったとしたら、それはひとえに私の祈りのせいです」。東京では今まさに、教え子たちが予選を戦っている。本来なら自分もその場に立ち会うべきところを、生徒たちの後押しによって選考会に参加する幸運に恵まれた。もしも生徒たちが予選を勝ち抜いてくれたら、次こそは何としてもこの目で見届けたい…。『小倉山 峰のもみじ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ』――小倉山の紅葉たちよ、もしあなた方に心があるのなら、どうか、どうか、散ることなく待っていておくれ――そう祈らずにいられなかったという奏に、中西は「この場は厳正なる選考会。どのような事情であれ減点は減点どす。……でも。和歌をたしなむ者として、その姿勢や嫌いにはなれまへんな」。中西の言葉に、奏の頬が思わず緩み――。

めぐるは超劣勢から驚異の追い上げをみせると、なんと運命戦で敵陣を抜き、大逆転勝利!さらに草太、春馬、千江莉も勝ち、梅園は4勝を挙げて敗者復活第1試合を突破!喜びを爆発させる梅園メンバー。次の試合も4人で頑張ろうと張り切るめぐるたちに、八雲が「ここから先は、先輩たちじゃ勝ちきれないですよねぇ」。頼もしいエースの復活でますます勢いに乗る梅園は、続く第2試合から八雲を真ん中に置き、快進撃!第3試合、第4試合と勝ち進み、ついに3週間後の最終予選進出が決定!『奇跡です!梅園高校、最終予選に行きます!』。梅園メンバーからのメッセージを読んだ京都の奏も、感極まって喜び爆発!
しかしその裏で、梅園を戦々恐々とさせる大番狂わせが起きていた…。なんと、東京都第1代表は瑞沢でも北央でもなく、ノーマークだった高校に決まったのだ。つまり、第2代表を決める最終予選には、瑞沢も北央も出てくる…。しかも途中棄権した風希には主治医のドクターストップがかかり、最終予選には出られそうもない。せっかく最終予選に残ったのに、まさかの事態に頭を抱える梅園メンバー。

一方、第1代表を逃した瑞沢のエース・懸心は、ある人物のもとを訪ねる。「俺にもっとかるたを教えてください、先生」。そう言って頭を下げる懸心。その相手は、綿谷新――。

「左手でかるたってどういうこと?」。最終予選が迫る中、めぐるは風希から思いがけない相談を受ける。右手が使えない風希は、なんと左手でかるたをやるというのだ。「藍沢左利きだろ?だから練習相手になってもらったらって…」。右手の診察をしてくれた主治医から、そうアドバイスを受けたという風希。めぐるは風希に連れられて、その医師に会いに行く。めぐるを待っていた医師は、瑞沢かるた部OBで、今は準名人となった真島太一で――。