無人島に運搬革命を起こすべく、男たちは木の枝葉が落ちる冬を狙い、“ロープウエー計画"を再開した。
以前、集落跡から延びるケーブルを辿った際、その終点は頂上付近の尾根まで続いていたが、さらにそこから新たなケーブルが島の裏側(東側)に続いていることを発見した。
そこで、リチャードとシンタローが、まだ未開拓の島の東側の浜から、ケーブルを辿ってみることにした。
それに先立ち、シンタローはロープウエーについて学ぶため、城島と共に、西日本最高峰の石鎚山(いしづちさん)のロープウエーを訪れた。
索道技術士・綾香博美さんによれば、DASH島のロープウエーと石鎚山ロープウエーの基本構造はほぼ同じ。
リフトなどの索道(さくどう)と呼ばれる種類で、起点・終点・ワイヤーロープ・支柱・動力からなり、ゴンドラなどの搬器を循環させて人や物を運ぶ。
ワイヤーロープは、レール代わりにして搬器をぶら下げる支索、動力で引っ張る曳索(えいさく)の二つ。
その終点となる先端には、58tものコンクリートの塊が重りとなり、気温で変わるワイヤーの張り具合を調節していた。
さらに、重量40tのワイヤーロープが山を越えるために、すべて人力で組み上げたという3本の支柱が支えていた。
その構造を自分の目で確かめるには、ゴンドラの屋根に上って、斜面にそびえ立つ高さ61mの支柱のてっぺんへ乗り移らなければならなかった。
そうして、恐怖と寒さに耐えながら学んだ知識を持ち帰ったシンタローは、島の東側の探索でケーブルが山頂まで続いてることを確認。
その道中で発見した朽ちて倒れた支柱、レールの部品、木に埋もれたケーブル、動力となるエンジンを修復すれば、島の東側にもロープウエーを稼働させられると確信した。
一方、港跡に半年前から出没し始めた生き物がいた。
それは、秋から冬に旬を迎えるクロダイ、別名・チヌだった。
餌を求めて浅瀬に迷い込んだのか、60cm級のヤツが二匹。
しかし、食料にしようにも警戒心が強いチヌを獲るのは至難の業。
そこで、シラウオ漁で知られる伝統的な仕掛け“四ツ手網"を作って捕獲を試みた。
まず、4本の竹を束ねてピラミッド型に広げ、繋ぎ合わせた漂着物の網と一体化。
岸に打ち込んだ鉄筋の軸に足場丸太を固定し、先端に滑車を取り付けて、紐で引っ張ると網が上がる仕組み。
おびき寄せるため、チヌの大好物、牡蠣とムラサキイガイの殻を砕いて網の中央に撒き、スタンバイOK。
チヌが網の上に差し掛かったタイミングで一気に引き上げる作戦だったが、捕れたのはなぜか数匹のクサフグのみ。
折角なので、都内のフグ料理の名店で捌いてもらうことに。
クサフグはトラフグより強力な毒を持ち、食べられるのはほんのわずかな身だけだが、それでも食べ応えを重視して、作って頂いたのは湯引き。
その美味しさに感動した松岡はフグの調理師免許取得に意気込みを見せたが、シンタローは難色を示すのだった。 |