2017年6月25日 放送内容グリル厄介 ~中国からの侵入者~

全国にいる日本本来の生き物を脅かす、2000種以上の外来種。
この、厄介だが罪のない命を、人だけが持つ料理という力で、
美味しく頂ければ、徐々に数が減っていき、
日本本来の生き物が棲みやすい自然が戻ってくるのでは?
今回、達也と松岡がやってきたのは、奈良県大和郡山市。ここは、
松岡「我らが城島さんの故郷ですよ」
昔から米づくりが盛んで、まさに西日本の食料庫。
その米を育てる命の水が流れる用水路に、今回の厄介なヤツが…。
達也「ここ(用水路)に外来種がいる感じはしないけどね」
静岡大学の加藤英明さんによると、
加藤さん「外来種は下の方に隠れます。いろんな外来種が集まる」
用水路の中に入り、手で探ると…
達也「ミシシッピですね」
早速捕まえたのは、北米原産のミシシッピアカミミガメ。
約70年前に日本に入ってきた外来種。
縁日の景品などにも使われ、ミドリガメの愛称で瞬く間に全国区に。
最初は小さくてかわいらしいが、数年で巨大になり、
飼いきれず捨てられたものが繁殖し、今では推定800万匹が野生に。
さらに、動くものには反射的に噛み付く厄介な習性も。
しかし、このカメよりも、もっと厄介なヤツがいるという。
農家さんに話を伺うと、『タウナギ』という名前が。
約100年前、ドジョウのような見た目から、観賞用に持ち込まれたとされる、
中国大陸原産の外来種。
数年も経てば、最大1mにも成長する。
さらに厄介なのが、
農家さん「田んぼの水が抜かれる」
加藤さん「畔(あぜ)にトンネルを作るんです」
タウナギは、外敵から身を守るため、地面に穴を空けて移動する習性が。
水を入れた田んぼの畦に、穴が空くと、水が流れ出てしまう。
農家さん「一晩で田んぼの水が空っぽになる」
そんなタウナギが潜んでいるのは、田んぼにつながる水路だという。
水路を捜索すると、北米原産の外来種のウシガエル、
そして、同じく北米原産のアメリカカブトエビを発見!
子ども向け雑誌の付録に使われ、不思議な生き物として流行。
卵は乾燥した状態だと数年持つと言われ水をかければ2~3日で孵化。
2週間ほどで成体になり、最大5㎝ほどになる。
一方、今回のターゲットのタウナギの姿はなかなか発見できず。
タウナギは夜行性で、日中は物陰に潜み、獲物を待ちかまえ、
夜になると、闇に紛れてエサを探し回る。
と、タウナギらしき生き物が一瞬姿を現した!
加藤さんがすかさず飛び掛かるが、
加藤さん「どこ行った!?やっぱり早いな!厄介だ!」
この俊敏さで捕まえるのが困難なため、駆除が進まないのが現状。
さらに、厄介なのはこの俊敏さだけではなく、振動に敏感なこと。
察知するとすぐに逃げてしまう。
水路の陰にタウナギを発見し、達也がそっと近づいて捕獲を試みるが、
あっという間に穴に隠れてしまい、捕獲失敗。
松岡「何かしたら出てきませんか?」
加藤さん「タウナギは、目の前に来たものを噛みます」
つまり、動くようなものをエサに釣るのが、最も効率が良い捕獲方法。
そこで、活きの良いミミズを使って、再度捕獲を試みる!
タウナギが潜んでいる穴の前で誘ってみると、
松岡「よっしゃ~!」
タウナギの捕獲に成功!
松岡「俺が思ってたのよりデカい」
タウナギは、その姿からウナギと名が付いたが、エラ・ヒレ・ウロコがなく、
ウナギとは全く別の種類。
深海魚から進化したと言われるウナギに対し、
タウナギはスズキの仲間から進化したと言われる。
さらに、エラが退化した為、水中での呼吸が苦手。
約30分に1度の間隔で、水面から顔を出して呼吸する。
つまり、その息継ぎの時が捕獲のチャンス。
コツを掴んだ松岡がそのチャンスを見計らい、その後も捕獲に成功。
達也「スゲエな、こんな短時間でこんなに捕まえるか」
こうして捕獲したタウナギは、計15匹。
では、確かめたい。こいつらを美味しく頂けるのか…?
やって来たのは、東京・中央区銀座。
銀座「ラパンサ」の若き天才、小林悟シェフ。
26歳で本場スペインへ渡り、ミシュランガイド三つ星店であり、
ヨーロッパベストレストランを獲得した名店「アスルメンディ」で
腕を磨き、その経験と技術は日本人だけでなく本場スペイン人の
舌をも虜にする。
そんな小林シェフに、今回の食材であるタウナギを見て頂くと、
小林シェフ「タウナギ?初めて見ました。捌いた事はないですけど、
スペイン料理ではウナギをよく使います」
スペインでは、養殖が行われるほどウナギがよく食べられ、
稚魚は高級食材で、一品1万円にも!
ならば、この中国からの侵入者もスペイン料理に!
まずは、頭を切り落とし、内臓を取り除き、皮を剥ぐ。
その過程で分かったのは、
小林シェフ「弾力があって身が固い。ウナギよりもアナゴに近い」
一方で、アナゴと大きく違う点も。
小林シェフ「血生臭さが強い」
そこで、この臭みをとるための処理が必要。
ジブラルタル海峡を挟んでアフリカと接するため、
多様な食文化を持つのがスペイン料理の特徴。
フレンチやイタリアンでは、バターや生クリームを使う事が多いが、
スペイン料理は、オリーブオイルやニンニクで臭いを消したり
サフランなどのスパイスを使ったり生ハムを挟んで、香りを移す知恵も。
スペインで培った技術と腕前で美味しく生まれ変わるのか!?
そして、いよいよタウナギの調理開始!まず、一品目は、
小林シェフ「“タウナギのフリット"です」
スペインではよく使われる手法の一つ、流水での血抜きを行い、
さらに、スペイン語で「漬ける」を意味するアドボという調理法を。
ビネガーに漬ける作業で、血合いの臭みを消し、スパイスなどの香辛料で
香り付けした身を、油でカラッと揚げたもの。
ナイフで切ってみると、
松岡「柔らかい!フワフワ!」
そして、その味は…
松岡「美味い!臭みがない!」
スペイン南部ではサメを使う調理法を応用する事で、臭みがなく、
食べやすい白身魚のような味わいと食感に仕上がった。
続く二品目は、
小林シェフ「“タウナギのパステル"です」
“パステル"とは、スペイン語でケーキの意味。
名前はケーキだが、いわゆるスイーツのケーキとは異なり、
スペインでは立派な前菜料理。
殺菌作用の高いセロリと煮込み、卵・トマトソース・生クリームなどと
ミキサーで混ぜ、空気を含ませてフワフワに。
湯煎しながらオーブンで焼き、素早く冷やす事で、
まるでババロアのような滑らかな食感に仕上がる。
松岡「めちゃめちゃ美味しい!」
タウナギの旨みとトマトソースが混じり合う事で、
濃厚なエビのような味わいが生まれる。
最後の一品は、スペイン料理の定番。
小林シェフ「“タウナギのパエリア"です」
ペドロヒメネスというシェリー酒を煮詰めたソースを使い、蒲焼き風に。
松岡「うまい!なんの臭みもない!」
達也「甘辛のタレがあってる!」
そのタレに負けないよう、ご飯は、鶏でとった出汁と
「香りの女王」と呼ばれるポルチーニ茸で炊き上げる。
タウナギの旨みを十分に使うため、タウナギを焼いた鍋で
パエリアを作る事で、タウナギの旨みを残さず使う。
加藤さん「これはスペインでも流行りそうですね」
今や当たり前に生で食べられるカツオやサバも、
昔、血合いの臭みを克服して、数々のレシピが生まれた。
そして今回、人間の叡智で、厄介者を美味しく、ありがたく頂く事ができた。
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