里山は落葉を取って堆肥をつくったり薪を取ったりするための林で、雑木林やアカマツの林が中心です。そこでは木が20年から30年たつと伐採して、薪や炭にします。そして雑木林では切株から出たひこばえを育て、つぎの代の木にします。この方法を萌芽更新といいます。また毎年、夏に林の下草を刈り取り、冬に落葉をかきとって肥料にします。
里山には浅い谷が細長く入り込んでいるところがあります。このような浅い谷は谷津と呼ばれ、田んぼ(谷津田)になっています。田んぼや畑は里地と呼ばれ、里地・里山と表されることがありますが、多くの生き物は里地と里山を一体のものとしてすんでいます。
谷津田では、後ろの山が小さいと、日照り続きのときに湧き水が涸れてしまうので、谷頭にため池をつくります。湧き水の量が多い場所ではため池がなく、湧き水が冷たい場所では水を暖める浅い池(温水ため池)があります。地域によってこうした違いがあるものの、谷に沿って細長く続く田んぼと、谷の斜面をおおう林は共通しています。
多くの生き物はいくつかの環境を組み合わせて使いながら生きています。しかもその環境の組合せが重ならないようにすみわけています。そのためこの組合せが多いほどたくさんの生き物がすめることになります。里山では林、水路、田んぼが組合わさってできています。それは人が生活するうえで必要な構造だからです。このような環境の組合せがいろいろな生息場所(ハビタット)をつくりだし、たくさんの生き物がそれらを組み合わせて使い、すみわけてきたのです。

DASH村をとりまく里山はコナラ、ミズナラ、クリ、ウワミズザクラなどが混じった雑木林で、本州中部以北に共通してみられる里山です。そして典型的な里山の生態系が存在します。多くの生き物がいくつかの環境を組み合わせ、その組み合わせが重ならないようにすみわけて生きている生態系がDASH村でも見られるのです。
たとえば両生類では、アカガエル類が春早く水田に産卵してオタマジャクシの時代を田植えのころまでに終えてしまいます。そして田植え後の水田ではアマガエルとトウキョウダルマガエルが卵を産み、オタマジャクシの時代を過ごします。シュレーゲルアオガエルも田植え後の水田でオタマジャクシの時代を過ごしますが、産卵する場所は畦(あぜ)の土の中です。
またため池では春早くアズマヒキガエルが産卵します。ヒキガエルのオタマジャクシがカエルになって池から出た後、モリアオガエルが池の上に張り出した木の枝に産卵し、オタマジャクシは池で生長します。
トウホクサンショウウオは小川で産卵し、そこでオタマジャクシの時代を過ごします。これらの両生類の多くは成体に変態した後は林に移動して生活します。
両生類がたくさんいると、それを食べるヘビが生活できます。DASH村にはヤマカガシが戻ってきました。ヤマカガシは小さいうちはアマガエル、アカガエル類、アオガエル類、ダルマガエルなどを食べ、大きくなるとヒキガエルを食べます。
里山に見られる林、水路、田んぼの組合わせは、たくさんの生き物のくらしを支えているのです。

雑木林は、毎年下草刈りと落葉掻きが行われ、15年〜30年に1度、伐採される明るい林ですが、現在は管理放棄されたところが増えています。そのような林は林内が暗くなっており、明るい林特有の生物が姿を消しています。
また牛や馬が役畜(荷物を運んだり田畑を耕したりするなど、労働力としての役割を持つ家畜)として飼われていた時代には、各地に放牧地・採草地などの草地が存在しました。現在これらの草地は林に遷移しており、草地特有の生物が姿を消しています。
DASH村の里山もこれと同じ変化をしていますので、つぎのような管理が必要です。
ツツジ類は光があたらないと開花しないので、コバノミツバツツジやヤマツツジを開花させるためには、雑木林を伐採し萌芽更新させるととともに、低木層の刈り取りを行います。
カタクリ、フクジュソウなど、春先に林床に当たる光で1年分の栄養を光合成する植物(春植物といいます)を生育させるには毎年下草を刈り、春先に光が入るようにします。
草地や林の縁、道ののり面も草刈りを毎年行います。キキョウ、オミナエシなど秋に咲く植物を保護するためには、夏に草刈りをする必要があります。
雨水を地面にしみこませるには堆積した落ち葉が必要です。またそのような環境を必要とする生き物もいますから、落ち葉が堆積した暗い林の場所を残すことも必要です。
こうしたさまざまな環境をつくりだすと、たくさんの生き物がそれらを組み合わせて使い、すみわけられるのです。



里山を教えてくれた先生。
子ども達や都市部の人々
に農村地域の自然や文化
を伝える活動をしている。




先生の活動は、こちらの
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