明雄さんのにっぽん農業ノート

長野県の特徴

  • 山地の総面積が84%を占める標高が高い県。
  • 飛騨山脈(北アルプス)、木曽山脈(中央アルプス)、赤石山脈(南アルプス)と3,000級の山々に囲まれる。3つの山脈は、アルプスに例えられ「日本の屋根」と言われる。

川上村

  • 標高は1270mと高い場所に位置する村。
  • 千曲川源流にあるため水が冷たく、米・果物・雑穀などが育ちにくいが、レタスなど高原野菜の栽培には適している。
  • 高原野菜発祥の地。

高原野菜

  • 一般的に標高1000m~1200mの高地で栽培される野菜。
  • 標高が高いため、昼は暑過ぎず、夜は涼しい。日中の光合成で作り出された養分が夜間の呼吸で糖分に変わる。夜間、涼しい程、呼吸量は上がる。
  • レタス、白菜、ブロッコリー、セロリなどが高原野菜として栽培されている。

レタス農家
林 敏幸さん(60歳)

レタス栽培37年目。父親の代からレタス栽培を行っており、敏幸さんは2代目。
息子である譲(すぐる)さんと一緒に家族でレタスの栽培を行う。収穫時期になると、一日でおよそ5000個のレタスを収穫する。畑作業は4月~10月まで行い、それ以外の期間は霜と乾燥の影響で農作業は行わない。

レタス栽培の特徴

  1. 気温 (栽培適正温度:20℃前後/昼夜の温度差20℃前後)
    22℃以上になると花が咲きやすくなってしまい、結球しにくくなる。夏場でも栽培できる地域は、北海道や本州中部の標高900m以上などに限られる。
  2. 潅水
    乾燥を防ぐためスプリンクラーを稼働。千曲川の源流からをタンクに貯水して水を確保している。
    しかし、雨が多い時期など水分過多になると葉が腐るなどの症状が見られる事もある。
  3. 鮮度
    収穫後、鮮度が落ちるのが早い。

栽培工程

① 播種

  • 育苗ポットに一粒ずつ種を蒔く。
  • 手作業の場合、時間がかかり過ぎるため播種機という道具を使用する。

使い方

  1. 播種機にある小さな穴に種を一粒ずつ入れる。
  2. 播種機は二重構造になっている為、全ての穴に種が入った事を確認したら、下側の板をスライドさせる。すると、種が育苗ポットにきちんと蒔かれる。
  3. 潅水システムが整った、ハウス内で管理される。

明雄さんメモ

これは村でも、導入したいシステムだな。今まで、米を育苗ポットに蒔く時に手作業だったから、時間も体力もかかってしょうがなかった。これを使えば、30分もかかってたのが、3分で終わってしまうな!

② 定植

  • 播種してから20日ほどの苗を畑に定植。
  • 畑一面に敷かれた白マルチにバーナーで等間隔に穴を空け、苗を手作業で定植。
  • その後は、スプリンクラーを使った潅水などで管理。定植から45日後に収穫する。

明雄さんメモ

苗が3cmでもう定植!土の栄養を早い段階で吸収出来るから、よく活着して生長が早いんだな。
村でも、小さいうちから定植させてみようかな。

③ 収穫

  • レタスは鮮度が落ちやすいため、収穫は深夜の2時から昼の12時頃までに行う。
  • 包丁の先端でレタスの茎部分を切り、収穫。
  • 包丁は引いて切るのではなく、押して切る為、先端部分にも収穫しやすいように刃がついている。
  • 収穫すると、切断面から「乳」と呼ばれる白い液体が流れ出る。この乳はいずれ酸素と結合し、酸化するため、品質を下げる原因になるので、すぐに洗い流す。

白マルチの効果

  1. 水分保持:適度な水分を保持
  2. 雑草防止:土壌に直射日光が当たらないため、雑草が生えない
  3. 肥料の流出防止:灌水や雨で肥料が流れない
  4. 泥はね防止:土壌からレタスに菌が付着し病気になるので、それを防ぐ。

白い訳:地温を5℃程下げる効果がある。黒マルチの場合、光を吸収するため、地温が上がる。

明雄さんメモ

俺自身は、黒マルチをよく使っていたけれど、白マルチは今まで使った事がなかった。
村ではあまりマルチを使用してこなかったけど、乾燥防止・除草・病害虫の感染防止など色々な効果があるから使用した方がいいな。

原村

  • 八ヶ岳と諏訪湖に広がる高原地帯(標高900m~1,300m)
  • 日照時間が長く、湿度が低く夏も涼しい。
  • 昼夜の寒暖差が高い気候がセロリにとって最適な生産地帯だったため、人口7800人という小さな村でセロリ生産量は日本一を誇るようになる。

セロリ農家
篠原 昭さん

セロリ栽培、30年目。
父親の代からセロリ栽培を行っており、2代目。冬場は酒蔵で働いている。

セロリ栽培

  • 毎日10~15分程、灌水を行う。
    →畝ごとに備え付けられた細いパイプの穴から雨のように水が吹き出る。
  • マルチと敷き藁を使用する事で除草、水分保持、泥はねを防止。
  • 定植後1か月目に芽欠きを行う。芽かきを行う事で本体に栄養が集中するので、セロリが大きくなる。
  • 定植から65日目に収穫。

明雄さんメモ

村で作った時は、間引きをしなかったから、大きくならなかったんだな。それにしても、原村のセロリは大きかった!

ピンク農法 (正式名称:光変換ピンク農法)

  • 太陽光がピンクのフィルムを通る事によって、光合成を促す赤色帯の光(570~700nm)に変換される(25%くらい太陽光よりも多い)。すると、光合成が促進される上、有害な紫外線が減少するので、生長促進・糖度の増加などの効果があらわれる。
  • ビニールハウス内の気温上昇が抑えられるので、作業環境も良くなる。

ピンク農法の効果

  1. 生長促進
  2. 早期収穫
  3. 収量の増加
  4. 糖度の増加
  5. 果樹の鳥害防止

中澤さん

諏訪理科大の教授と一緒にピンク農法を開発。光変換の技術などの研究していたが、農業にも生かせないかという発想がきっかけでピンク農法が生まれた。

小澤さん

ピンク農法をやる前からこの場所で野菜の栽培をしていた。
中澤さんにピンク農法を勧められ、研究者達と一緒に野菜を栽培している。

明雄さんメモ

ピンク農法は今まで聞いた事がなかったけれど、実際に使用して効果など勉強してみたい!

飯山市

日本でも有数の豪雪地帯。新潟と長野を結ぶ交通の要所として古くから栄えた。
現在年間20tほどのそばが栽培されているが、殆どが地元で消費される。

富倉そばの特徴

  • オヤマボクチ(ゴンボッパ)の葉の繊維、「茸毛」(じょうもう/葉の裏に生えるうぶ毛のような白い繊維)をつなぎに使ったそば。
  • 富倉は雪深い土地で麦の栽培が難しく、小麦粉が手に入りにくかったので代わりにオヤマボクチを使用したのではないかと言われている。
  • オヤマボクチを使用すると、そばの風味を損なわず、十割そばのシコシコとした独特な歯触りと喉ごしの良さを味わえる。
  • 交通の不便な土地な上、家庭の女性によって伝承されていただけだったが、評判を聞きつけた著名人やそば通が通い,「幻の蕎麦」として噂が広まった。
  • 茸毛を使うので、そばを極限まで薄く打つことも可能。

オヤマボクチ

  • キク科ヤマボクチ属の多年草。
  • 元々、火起こし時の火口(ほくち)として用いられ、火縄銃の導火線にも使用された事がある。
  • DASH村では「ゴンボッパ」という呼び名で凍み餅に使われた。
  • オヤマボクチは使われ方として、同じキク科の多年草である『ヨモギ』によく似ている。例えば、新潟県の笹団子や山梨県・檜原村(東京都)の草餅はヨモギが使われるが、福島県の葛尾に江戸時代末期から伝わる『凍み餅』はオヤマボクチが使われる。オヤマボクチはヨモギほどクセがなくさっぱりしているので食べ易い。

そば職人
石田屋一徹さん

そば屋・石田屋一徹の店主。そばづくり25年目。
ソバとオヤマボクチの栽培、そば打ちを一貫して行っている。

富倉そば打ちの工程

  1. オヤマボクチをお湯でもどす(蕎麦粉:オヤマボクチ/1kg:5g)
  2. そば粉をボウルに取り出し、もどしたオヤマボクチと水を加えて混ぜる。
  3. 残りの粉に水を入れる。(水回し)
  4. 水回しをしたものに①で作ったオヤマボクチ入りのタネを入れ、15分程練る。
  5. 麺棒で四角くなるように薄く伸ばす。1回目の打ち粉の際は、片栗粉を使用する。
  6. 和紙の上に広げ、30分程乾燥させる。乾燥させずに切るとオヤマボクチの繊維が包丁にくっついて切りにくい。
  7. 麺台の上で生地をたたみ、切る。
  8. 1分程茹で、水で締めて、盛りつけて完成。

明雄さんメモ

俺もオヤマボクチは昔から良く利用していたけれど、そばで使用するとは知らなかったな。
味は、そばの風味がそのまま味わえて最高に美味しかった。また食べにいきたい!