明雄さんのにっぽん農業ノート

  • 日本のぶどう栽培発祥の地。
  • ぶどうの収穫量が全国第1位。
    (平成22年/年間45,100t・約24.4%)
  • 甲府盆地は寒暖の差が激しくぶどう栽培に適しており、約1000年前から栽培されてたとされる。
  • 現在、80軒以上のワイナリーがあり、ぶどう栽培が盛んな勝沼周辺には34軒が集中している。

勝沼地区がぶどう栽培に適している6つの理由

  1. 日照時間が長い。(※山梨県は日本一長い)
  2. 水はけの良い土壌。
  3. 大部分が扇状地や山麓斜面に立地している。
  4. 日ごと、季節ごとの寒暖の差が大きい。
    ※ぶどうは、昼間作った養分を夜間つるや葉の生長エネルギーとして使う。しかし、夜が寒いと生長が遅れ養分が葉に残り、その養分を実が吸収するので糖度があがる。
  5. 盆地での年降雨量は全国平均に比べ約1000mmと少ない。
    ※ぶどうの果実に雨が当たってしまうと、そこから病気になる事が多い。

明雄さんメモ

サラサラした土質で村とは全く違ったぞ。この土質がぶどう作りに良かったんだな。

ワイン

ワインとは、ぶどうの果実をアルコール発酵して作る醸造酒。
ビールや日本酒などの穀類を原料とする醸造酒は、デンプンを糖に変える「糖化」が必要だが、ぶどうの果実の場合、充分な糖分・水分・酵母を含んでいるのでそのままでも醗酵が可能。その分、原料であるぶどうその物の性質がワインに大きな影響を与える。それが、ワインに多種多様な個性を与える要因になる。

ワインの性質に影響を与える条件

①ぶどうの品種 ②産地 ③気候 ④土壌 ⑤栽培方法 ⑥醸造方法

ワインの歴史

明治3年頃:明治政府の奨励で山梨県甲府市に初めてぶどう酒共同醸造場を設けられる。
明治7年:白ぶどう酒4石8斗(約900L)、赤ぶどう酒10石(約1800L)を生産。これが記録に残る日本初のワイン生産と言われる。
明治10年:大日本山梨葡萄酒会社が設立され、高野正誠、土屋竜憲の二人の青年がフランスに派遣された。彼らは1年7ケ月の研修後、ぶどう栽培方法と醸造技術を持ち帰り、日本のワイン醸造の向上に尽くした。

ルミエール
小山田 幸紀さん(36歳)

明治18年(1885年)創業のワイナリー・ルミエールの栽培と醸造の責任者。広い自社農園を持ち、棚栽培と垣根栽培を行う。

メルロー

  • フランスのボルドー地方原産の赤ワイン用品種。
  • 深みのある色合いとまろやかで口当たりの良いワインとなる。
  • 湿度が高く冷涼地を好むため、日本の気候条件に合う。
  • 村では、2009年3月にワインづくりを目指し、栽培を初めていた。3年目である今年の秋には収穫予定であったが、震災で手入れが出来ないため断念した。

果肉

  • 生食用のブドウに比べて糖度が高い。
    ※醗酵時に糖分がアルコールに変化する為、糖度が高くないとアルコール度数があがらない。
  • 糖分は、ぶどうの果皮と果皮に近い果肉部分に最も多く含まれているので、ワイン用のぶどうは粒が小さく凝縮したものが良いとされる。

  • 種の食味は収穫時期の判断材料の一つとなる。
  • 未熟な場合、強いえぐさがあるが、収穫適時は少し甘みがでてナッツのような味になる。

  • 糖分などの養分は葉で作られる。
  • 葉が少ないと充分に光合成が出来ず糖度が低くなり、酸味が際立ったブドウになってしまうので、葉の管理は重要。

ぶどう畑の管理方法

①草をほとんど刈らず、不耕地栽培

  • 余分な養分や水分を草が吸い取る。
  • 草が多いと虫の種類が増えるが、カマキリやクモ、テントウムシ等の肉食の虫も増え、ブドウの葉を食べる害虫を捕食してくれる。

②棚栽培と垣根栽培

【棚栽培】

  • 日本の風土に合った栽培法。
    ※日本は高温多湿で肥沃な土壌なため、つるがどんどん伸びる。
  • 垣根に比べて実を多くつける。
    ※村では、巨峰・メルローとともに棚栽培を行った。

【垣根栽培】

  • 欧米では垣根栽培が一般的。
  • 垣根のように枝を垂直に伸ばす栽培方法。
  • 春に出る新梢を数本のワイヤーで支え垂直に伸ばし、膝丈から腰の位置に房をつける。
  • 摘果や収穫の作業がやりやすい。
  • 収量は少ない(1本の木から10房程度)が、一粒にいく養分が多いので甘くなる。
  • 棚栽培よりも直接果実に日光が当たるので、実の糖分が増えるが、雨の多い日本では難しいとされてきた。しかし、近年、ワイン専用種には垣根栽培を採用する生産者が増えている。
    ※グレープガード方式・・・雨による実の腐敗を防ぐためにビニールの傘を掛けたもの。梅雨と秋雨がある日本独自のもの。

③混植栽培

垣根栽培において、一列に同じ品種を植えるのではなくあえて別の品種を混ぜて植える栽培方法。
品種が違えば、生育のスピードが異なるため、自然災害や病気で同一の被害をうける確率が減る。

明雄さんメモ

  • 今まで草を刈らず残すようなやり方をした事がなかったから初めて知ったぞ。俺たちは虫が増えるのを嫌って刈って来たけど、わざと増やして害虫を減らすやり方は興味深いな。
  • 村でも試してみたいけど、土質が違うからどうなるか分からないな。

勝沼醸造
平山 繁之さん(53歳)

24歳の頃からワイン作りに携わり、今年で29年目。ワインづくりへの情熱は熱く、美味しいワインを作るため様々な試みを行う。特に、甲州ぶどうを使ったワインづくりに力を入れている。

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甲州

  • 約1000年前から甲州地方で栽培される日本の固有品種。
  • 果皮は薄紫色で香りは控えめ。
  • 果肉は多汁で甘みがあり、種の周りは酸味がやや強いので、ほどよい甘酸っぱさがある。
  • 明治までは食用として栽培されていたが、明治時代以降はワインの原料としても利用される。
  • 古くは薬の役割もあった。

ブルーム

果粒の表面を覆う白い物質は、水をはじき、病気などから保護する働きがあると考えられている。

テロワール(terroir/フランス語)

それぞれの土地が持つ個性を示す。畑の地形(斜度や向き)、標高、気候(日射量や降雨量、気温)、土壌などぶどう栽培に影響を及ぼす要素を抱合する。この全ての要素がワインの味を左右する。

上川久保

  • 近くを流れる日川が氾濫し運ばれた土壌が砂質でぶどう栽培に適していた。
  • 川風が吹き、風通しが良いので病気になりにくい。

明雄さんメモ

  • 上川久保の土は、すごくサラサラした砂質だから水はけはいいな。風もよく吹き抜けるから病気にもなりにくく、ぶどうを栽培するにはいい環境なんだな。
  • 飲み比べたワインの味は全く違って驚いた。村でも色々な場所に植えてみて、味の違いが出るのか実際にやってみたいな!

ワインが出来るまで

赤ワインと白ワインの違い。
白ワイン:始めに果汁を絞り、その果汁を醗酵させる。
赤ワイン:色付けや渋みを出させる為に皮や種ごと醗酵させる。

白ワインづくりの工程

①除梗

  • 収穫したぶどうを梗と実に分けるための除梗機に入れる。
  • 梗はえぐみの原因となるタンニンが多く含まれため取り除く。

②破砕

果粒を果皮が破れる(種まで潰れない)程度につぶす。
※ワイン工場では、通常機械を使い除梗と破砕を同時に行なう。

③圧搾

※赤ワインは破砕のあと、醗酵させる。醗酵を終えたら圧搾する。
破砕したぶどうの果実を果汁と共に圧搾機に移す。使用した圧搾機は、ゴム風船の内部を水で満たし膨らませ、圧力が上がり加圧する事で果汁を搾る。

④醗酵

  • 果汁に培養酵母を加え、醗酵を促す。
  • ブドウ糖に酵母が反応し、アルコールと炭酸ガスになる。
  • 白ワインの適温は10℃~15℃、赤ワインは25℃程度で1~2週間発酵させる。

甘口ワインと辛口ワイン

  • どの程度の糖を醗酵させるかによって甘口か辛口か決まる。
  • 甘口ワインにする為には、酵母が働かなくなる5℃まで温度を下げ、醗酵を止める事で糖分が残った状態で完成となる。

赤ワインのかいつき作業

  • 果皮や種が液面を覆ってしまうと酸素の循環が滞り、微生物汚染や醗酵不良、色素やタンニンの溶液不足の原因となるため、かいつき作業で循環させる。
  • 2週間行なわれ、最初の2日間は1日4回、その後3回、2回と徐々に回数を減らす。

樽倉庫

  • 木目から流れ込む微量の酸素と触れることで穏やかに酸化し熟成が進む。
  • 樽の香りや風味を抽出する効果もある。
  • 醗酵する樽と熟成させる樽は別なので、醗酵が終わると熟成用のタルに移される。
  • 醗酵栓・・・醗酵期間中のみつける栓。醗酵により生じた炭酸ガスを外に逃がし、栓の中にいれた水によって外からの空気や雑菌が入り酸化しないように外気を遮断する。

明雄さんメモ

ワインを造る工程は初めて見た。今まで知らない世界だったから、どれも新鮮で勉強になった。

トンネルワインカーヴ

  • 甲州市勝沼町にあるトンネルを利用したワイン貯蔵庫。
  • 明治36年に建造された、鉄道文化の遺産としても貴重なレンガ積みのJR旧深沢トンネルを再利用し、ワインの長期熟成と付加価値を高める施設として整備した。
  • 全長1100m。入口から200mが322の個人オーナーのユニットで、200m~1100mに勝沼の13社のワイナリーがワインを貯蔵している。
  • 温度は年間を通じて約14℃、湿度は60~70%とワインの熟成には最適な条件がそろっている。
  • 約30万本のワインを貯蔵できる。