明雄さんのにっぽん農業ノート

タケ(イネ目 イネ科 タケ亜科)

  • 多年生常緑植物の単子葉植物。
  • 同じイネ科のイネ、ムギ、ススキなどと比べるとタケは木化し、大型になる。
  • タケノコを漢字で書くと「筍」で、これは「1旬にして竹になる」という意味。

歴史

古くから日本に生息し、生活圏内という身近な場所で入手できる極めて利用度の高い植物であり、捨てる所がないといわれるほどさまざまな用途に使用された。しかし、高度経済成長に伴い昭和30年代以降、工場で大量生産される金属・プラスチック・ビニール製品などに取って代わってしまった。

DASH村での竹利用

  • 母屋屋根
  • 炭出し小屋の屋根
  • 畑の支柱・ビニールハウスやトンネルの骨
  • イノシシ対策用竹鳴子
  • 竹馬
  • 物干し竿
  • 土壁の下地
  • 氷室の日よけ
  • 流しそうめんのトイ
  • 茶筒
  • 和傘など

ハチク(淡竹)

  • 中国原産。
  • 稈長12~18m近くに達し、直径は6~10cmほど。
  • 節間長は40cm。
  • 茶筅やひご細工(提灯、すだれ)としてよく利用される。
  • 真竹と同様に弾力性、割裂性ともに優れるが、稈の繊維が細いため、耐久性は真竹ほどない。
  • タケノコの味は甘みがあって柔らかく美味。
  • DASH村には役場の横や裏にハチクの林があった。

福岡県 八女市

恵まれた気候風土と伝統技術に育まれた八女の農業は、全国ブランドとして、茶・菊・ぶどう・いちご・キウイ等がある。竹林は2,461haと全国でも最大級の竹林面積を有している。

タケノコの生産量

1位 福岡県 13,225.8t ※その約7割が八女市で生産される。※全国にすると2割以上
2位 鹿児島県 10,791.3t  
3位 熊本県 2,952.9t  

平成22年の統計データ(農林水産省調べ)

野中 重之 (のなかしげゆき) さん

林業試験場や森林林業技術センター等で『竹』の研究をしていた。退職後、30年以上放置していた自宅の竹薮を整備する現役の生産者。竹林利活用アドバイザーとして全国から注目される。

江口 正道 (えぐちまさみち) さん

定年後、野中さんの指導の元、所有していた竹山を整備し、タケノコ栽培を開始。平成16年に竹林品評会で林野庁長官賞を受賞。平成20年度には最高賞の農林水産大臣賞を受賞した。

モウソウチク(孟宗竹)

・稈長20m以上、直径10~18cm。
・中国を含むアジア大陸の東南部が代表的。
・国内で食用タケノコとして利用されているものの大部分がモウソウチク。
・材質がマタケに比べて劣り、折れやすいために繊細な工芸品などには適さない。

マダケ(真竹)

  • 稈長10~20m以上、直径8~12cm。
  • 節間長は30~50cmになる大型のタケ。
  • 古来より日本に生息し、最もよく利用されてきた種。
  • 青竹と称される光沢のある稈が特徴。
  • 竹材としてはタケ類の中でも最高で、屈曲性、弾力性、加工性、耐久性に優れているため、ほとんどの加工製品材料として利用される。

モウソウチク、マダケの見分け方

  • モウソウチク:節が1輪で節間が短く太い。稈は地面に近い部分が太い。
  • マダケ:節が2輪で節間が長く細い。稈は上から下まで比較的細く、均一の太さ。

三大有用竹

タケ亜科の種は、世界で1200種とも言われ、そのうち日本には650種があるといわれる。
ハチクとマダケとモウソウチクで日本三大有用竹と呼ばれている。

  節間 強靭さ 直径 柔軟性 タケノコ
モウソウチク 25~30cm 10~18cm 折れやすい エグ味あり
ハチク 40cmほど 6~10cm 雪圧に弱い 美味
マダケ 30~50cm 8~12cm 良い 苦みがある


タケ・ササの分類

日本では生長が終わるとすぐに竹の皮が脱落するものを「タケ」。生長しても長期間竹の皮をつけているものを「ササ」と呼んで区別している。

竹の寿命と竹年齢の把握

竹の寿命は10~15年程だが、5年以上経つと地下茎の働きも衰え、タケノコの量や質が悪くなる。そのため、5年目の竹を毎年秋に伐採し、同じ数の若い竹を残す事でタケノコの質や量を維持している。年によって残す竹が変動すると、タケノコ発生量も変動するため、農家はタケノコが発生した年を把握する為にカラーテープやペンキで色分けし、誤伐がないようにする。

竹の生長

タケノコとして地面に出る時点で完全な節の構造が備わっており、約60ある節の数は増えることはなく、太さもそのまま。生長は40日程でストップして、所定の長さに伸びきってしまうと、後は何年たっても伸びも太りもしない。
植物において、伸長生長の速度はタケ類が群を抜く。
モウソウチクの場合、1日に1.2m伸びたという記録がある。

生長が速い理由

①生長に必要な栄養源をすべて母竹から地下茎経由で得ることができる
多くの植物は,種子に蓄えられた栄養を使い果たした後は,光合成によって自力で栄養をつくりながら生長するが、タケは周りの親竹から地下茎を通じて栄養をもらうことができるため,驚異的なスピードで生長できる。

②節のくり返しからなるタケの構造
多くの植物は、茎の先端に生長点をもち,ここで活発に細胞分裂を行って伸びるが、タケはすべての節に帯状の生長帯をもつため各々の節が同時に生長。まるで提灯を広げるように伸びる。

地下茎・芽子(がし)

地下茎とは地中に伸びる茎で、タケノコ発生の母体となる。地下茎には約5cm間隔で節があり、左右交互に芽子という芽がつく。発芽すると大部分はタケノコとなって地上部に伸びるが、いくつかは地下茎として分岐。地下茎には根が広がっており、地中の水分や養分を吸収して地下茎に送り、タケノコに送られる。地下茎は5~15cmの深さを上下に波打ちながら伸びる。

竹の区分

竹は雌雄同体で地下茎によって繁殖するため、生物学上は雄と雌の分類はないが、タケノコ農家は最下枝が1本のものをオス竹、最下枝が2本のものをメス竹と呼んで区別している。これはメス竹のタケノコ発生量が多く、オス竹は古い地下茎から発生した竹でタケノコの発生が少ない。

明雄さんメモ

竹や笹の花は見た事があるぞ。やっぱり、イネ科だけあって咲いた後に出来る実は稲穂みたいだった。磐梯山の詩にも、「会津磐梯山は宝の山よ 笹に黄金がなりさがる」って歌われてんだ。

竹林を間伐する理由

その①日光と水分の補給
親竹密度が高くなれば、親竹1本1本に太陽光線が十分に当たらず、下枝の数段が枯れ枝となり、親竹の光合成も減少し、地下部では養分や水分の奪い合いとなるため、タケノコを生産する力が減退。そのため、竹林は適度に間伐し、地面に日光が当たるよう整備しなければならない。
地温を上げればタケノコ発生を促進できる。

その②竹害
竹林の手入れを怠ると,周囲の森林にタケが侵入して植生を破壊することがあり,「竹害」として問題になってしまう。

間伐した竹の利用法

筋置き

2~3m間隔で等高線に沿って筋置きすることで、肥料や土砂の流出防止(特に大雨時)、作業の安全性向上、肥料散布や収穫など作業範囲の目安になるなどがある。

果樹園の支柱

竹材はスギやヒノキなどの針葉樹材と比べて軽い割に強度もあり、多用されてきた。

竹粉砕機

竹を丸ごと1本潰して2mm~8mmの粉にすることができる。竹を入れると手前のローラーで竹をプレスしながら引き込み、奥にある2枚の刃で細かく砕く。20m位の竹を、1分半で粉砕できる。

竹堆肥

竹にはデンプンやショ糖などが多く含まれているために土着菌がよって来て村でやっていた落ち葉堆肥よりも早く発酵がすすむ。

竹炭

竹炭は多気孔のため、土の浸水性、保湿性、保水性などが改善される。土壌改良資材の他にも、調湿材、水質浄化、消臭用などさまざまな用途で役立つ。竹炭で土壌改良すると作物の根はりが良くなる。

竹食器

伐採竹を粉末化した竹繊維と、とうもろこしから作られたPLA(生分解性樹脂)を比重51%と49%で混ぜ合わせたもの。割れて使えなくなったとしても1年で土に戻る。八女市の全小中学校に導入されている。

竹茶

竹粉砕器で粉砕した竹粉を焙煎してつくったお茶。
アミノ酸などの有効成分をたくさん含んでいる。

明雄さんメモ

  • 竹の粉砕機はあったら便利だな!
  • 竹の堆肥は、初めて見たけど、あれはいい肥料だ!あれだったら、畑に使ってみたいな。田んぼにも、もっと細かくして粉末状にしたら使えそうだな。
  • カブトムシがよく来てたけど、村の堆肥にも良く来ていたな。

タケノコ掘り

タケノコ掘り用クワ

タケノコ掘りに使用する。産地によって形状や重さなどは違っているが、八女で使われるクワは、幅が狭く長い形状をしているのが特徴。

地割れ

地割れを探して掘ると、地表面に出るより15日~20日も早く収穫できるため柔らかくエグミのない良質なタケノコが収穫できる。地表に出てしまうと酸化してえぐみが出てしまうので地中にある物を収穫しなければならない。地割れはモグラなどの小動物が通った後にも似ているため間違えやすい。

収穫後の処理

収穫した後は、地下茎に枯れ葉や竹の粉なので栄養分を補充してやる。タケノコの地下茎は養分の多い方向に伸びて行くため、翌年に同じ場所からタケノコが出る可能性が高くなる。

掘り方

クワを入れる場所はタケノコの穂先が向いている側と同じ方向にクワを入れる。反対からクワを入れると地下茎の下に入り、なかなか収穫できない。

良いタケノコ

  • 穂が黄色で緑の芽が出ていないもの
  • 皮に艶があり、毛がそろっているもの
  • 形が砲弾型でずんぐりとしていて重いもの

茹でタケノコの下処理

穂先を切り落とし、中身が切れないギリギリのところまで包丁で切り込みを入れておくと、火の通りも良くなり、あとで簡単に皮を向く事が出来る。

アク抜きの仕方

一般にはアク抜きの時、米ぬか、もしくは米のとぎ汁か、生米を利用したり、重曹やふくらし粉などのアルカリ性の水で加熱することでえぐみが抑えられる。
お湯から茹でると、中心と外側の煮え具合に差ができて食感が悪くなるので水から茹でる。

明雄さんメモ

  • 俺たちが、食べてたタケノコは大きくなってから穫ってたぞ。八女市みたいに、小さい時に穫ってなかったから、根元は固くて食えなかった。八女市のように、小さい時に穫ったタケノコは柔らかくて、甘みがあってうまかった!
  • 土を掘ってタケノコを穫るのは初めてだったけど、野中さんや江口さんの話しをちゃんと聞いて、それを実行すればうまく出来るんだ。