明雄さんのにっぽん農業ノート

大阪府貝塚市

貝塚市は大阪府の南西部に位置する都市。
二色の浜や、本州南限圏の天然記念物ブナ林を育む「和泉葛城山」など豊かな自然に囲まれた町。人口は約90,000人で、水なすは貝塚市の特産物にもなっている。

泉州地域

泉州地域は大阪の南西部に位置する地域で、昔「和泉国」と呼ばれていた地域を指すとされる。
瀬戸内式気候帯に属し、海と山に囲まれており温暖な気候で年平均気温は約16℃。
水なすは泉州地域を代表する特産物で、現在泉州の各地域で栽培されている。

兄・中出庸介さん

祖父の代から水なすを栽培している中出家の3代目。主に水なすの栽培を担当している。
高校時代は野球の強豪校、大阪桐蔭高校野球部に所属し、代打の切り札として活躍していた。
高校卒業後は大学へ進学するも、水なすの収穫時期になると毎朝早起きをして頑張る両親の姿に、「自分が助けてあげたい」と思い始め、今までやりたい事をやらせてくれた両親を助けるために大学を2年で辞め家業を継ぐ。

弟・中出達也さん

高校卒業後、自分達のために必死で働いてくれる家族に気持ちで応えたいと、家業の農業を手伝い始める。母の「漬物を漬けてみないか」の一言が達也さんのチャレンジ精神に火をつけ、その後は本格的に漬物職人として家業を継ぐ。主に漬物加工を担当しており、中出農園のぬか漬の味を作り出す。こどもや若者にも喜んで食べてもらえるサラダ感覚のぬか漬をつくりたいと、日々漬物作りを研究している。

母・中出明代(あきよ)さん

中出兄弟の母。水なすを使った創作料理が得意。
中出農園のブログに日々レシピを載せている。

明雄さんメモ

あんな若い兄弟がやっているのはすごいと思ったな!
やっぱりこれからは年寄りじゃなく、若い人たちが新しいことをやっていかないといけねぇんだ。おれらとは考え方が違うからな。

泉州水なす

泉州地域で江戸時代から栽培されていると伝わる伝統野菜。
一般のナスに比べてずんぐりとした丸型で、皮が柔らかく、名前のとおり手で握ると水が滴り落ちるほど水分が多い。

中出農園の水なす栽培

水なすはハウス栽培と露地栽培があるが、中出農園さんはハウス栽培。
ロケで伺ったハウスは長さ50m・のハウスが3棟つながっていた。

生でも食べられる

水なすは他のなすに比べてアクが少ないため、生で食べることができる。
江戸時代の文献「庭訓往来」によると、水なすは菓子(当時は果物の意味)の覧に記載があり、水なすはフルーツとして扱われていたとされる。
そのみずみずしさから、昔農民が炎天下での農作業の際に、喉の乾きを水なすで潤したとも伝えられている。

水なす栽培には水が大量に必要

泉州水なすの栽培には、土を常に湿っている状態にするほど大量の水が必要。そのため、土の周りにはコケが生えているほど。
木の根元には1本の長いパイプが通してあり、近くのため池から引いてきた水をポンプで汲み上げ、水をパイプに通し、水やりをしている。中出農園では土の状態を毎日確認し、夕方の涼しい時間帯に水やりをしている。

ため池

大阪府は全国でも6番目にため池が多い。大阪府は平年降水量が少なく大きな河川もあまりないため、古くから農業用のため池がいくつも作られてきた。その総数は約11100ヶ所。中でも農業が盛んな泉州地域には約3分の1の約3600ヶ所のため池が集中している。

DASH村でのナス栽培

なすはDASH村でも常に栽培されていた定番の野菜で、露地にて栽培していた。
水は自然の雨だけで十分だという考えから、基本的に水やりを行っていなかった。

明雄さんメモ

村の土は粘度質だったから、水やりはしなくて自然の雨だけで十分だったんだ。
やっぱり水なすをみずみずしく作るには水やりが大切なんだな~。
搾っただけであんなに水が出るとは思わなかったぞ。

葉が当たるだけで傷がつく

水なすは皮が薄く柔らかいため、風でゆれた葉っぱが実に当たっただけでも傷がついてしまう。
そのため、中出兄弟は毎朝1500本もの木を見回り、傷がつかないように実の周りの葉を切る作業をしている。

収穫

水なすは一本の木から合計で約120~150個程収穫できる。
収穫の目安は水なすを握り、余った部分に指が2本以上入れば収穫のサイズ(約200g)。
(カゴに入れた時や選別の際に)水なすを傷つけないよう、水なすのヘタは短く切る。
中出兄弟は多い時で1日約3000個の水なすを収穫している。

選別作業

選別は機械でなく手作業で行う。
収穫してきた水なすを一つ一つ目で確認し、A品とB品以下に分ける。

A品

傷がなく色や形がキレイなもの。

B品以下

傷があったり形が悪いもの。色がくすんだりボケているもの。

A品は主に漬物の加工用に、それ以下は直売所や市場に出回ることが多い。

ボケナス

ツヤがなくなり色がくすんでいるものを「ボケナス」という。
ボケている部分は実が固くなってしまうため、ボケナスはA品にはなれない。

漬物加工

工程

  1. 米ぬかに塩水を加え、大型ミキサーで混ぜる。
    精米したての新しい米ぬかを使っているので柔らかく、臭みや嫌な酸味がない。
  2. なすに塩を擦り込む。(塩もみ)
    塩揉みをすることで水分が適度に抜け、なすがぬかに漬かりやすくなる。
  3. 混ぜ終わったぬかを丸める。
    水ナスは空気に触れると色落ちしてしまうので、ぬかの空気を抜きながら丸めていく。
    ハンバーグを作るイメージ。
  4. 袋の中にぬかを入れ、なすを押し込む。
  5. ぬかでなすを全体的に包み、空気が入らないように密封する。

食べ方

水なすのぬか漬けは、漬けてから3~4日目が食べ頃。
ヘタを切って上に切り込みを入れ、そこからは手で縦に割く。
手で割くと食感が良くなり、より美味しいとのこと。

明雄さんメモ

なすをまるごとぬか包む発想はすごいな!
これまで色んななすを見てきたけど、水なすは漬物とかの加工にも向くなすなんだな。
それと、あそこの家族は兄弟もお母さんも役割り分担がしっかりしててすばらしかった!
きっちり作業を分けるから、ちゃんとした良いものが作れるんだな。

料理

水なすの切り方

水なすは縦切りがオススメ。縦に切ると繊維を壊しにくく、水なす本来のみずみずしさを保てるという。

焼きなす

  1. ヘタを切り、縦に半分に切ったなすを更に縦に3等分する。
  2. 切ったなすを炭火で焦げ目がつくまで焼く。
  3. 焼いたなすをお皿盛りつけ、かつお節にポン酢を垂らして完成。

揚げなす

  1. ヘタを落として縦に半分に切った水なすを、イチョウ型に縦に3等分する。
  2. 180℃の油でなすの皮がキレイな紫色になるまで揚げる。
  3. キッチンペーパーで余分な油を吸わせ、お皿に盛りつける。
  4. 細かく砕いた岩塩をふり完成。

麻婆ナス(松岡特製)

  1. 焼きなすの様に3等分したなすを更に縦半分に切る。
  2. 温めておいたフライパンに油をしき、ひき肉となすを入れ肉の色が変わるまで炒める。
  3. 豆板醤、醤油、鶏ガラスープの素、おろしニンニク、砂糖を入れさらに炒める。
  4. お皿に盛り付け完成。

明雄さんメモ

大長なすは焼くとトロトロになるけど、水なすはみずみずしいままだったぞ!
縦に切った方が良いというのも初めて知ったな。
料理は全部美味しかったけど、おれはやっぱりぬか漬が一番うまかったぞ~