出張DASH村

大分県竹田市

  • 大分県竹田市は大分県の西南部、九州のほぼ中央に位置している。
  • 阿蘇外輪山野久住山などに囲まれた標高250~600mの丘陵地にある中山間地域。
  • 市内には良質な湧き水が随所にあり、昭和60年には環境庁より「竹田湧水郡」が全国名水百選に選ばれるなど水資源に恵まれている。
  • 気候は内陸型で寒暖の差が大きいとともに、梅雨期と台風期に降水量が特に多い。

お世話になった方

とうもろこし農家
卯野英治さん(65歳)

中学を卒業すると同時に農業を始め、とうもろこしの栽培歴は50年。
美味しい作物を届けたいという熱い想いを持ち、東京ドーム8個分の畑でとうもろこしを栽培。さらに、海外の研修生を受け入れ、農業を教えるなど、技術の伝承にも力を入れている。

卯野れい子さん(65歳)

英治さんの奥様。英治さんと共に、広大なとうもろこし畑を守り続けると共に、研修生を母のように支える。

農業研修生

現在、卯野さんは9名のフィリピンからの農業研修生を受け入れている。外国人技能実習制度を利用して、母国でその技術を活かすべく、3年間、住み込みで日本の農業を学ぶ。

トウモロコシの特徴

属名:イネ科トウモロコシ属
茎:茎が直立し、高さが1m程度と比較的低い物から、4mの高さまで伸びる物まである。
花:花は咲かない。花に見えるのは、雄小穂(しょうすい)と雌小穂と呼ばれる部分。

  • 「小麦」「米」とならんで世界の三大穀物と呼ばれる。
    →世界生産量が、小麦は約6億トン、お米が約4億トンの生産量に対し、トウモロコシは年間8億トンを超え、今もなお、増加している。
  • すごあまこ~んは、いわゆるスイートコーンと言われるもので、未成熟状態で収穫する甘味種で、農林水産省では「穀物」ではなく、「野菜」として分類される。
    →穀物としてのトウモロコシは、完熟したもの。その特性により、ポップコーン、デントコーン
    (家畜用トウモロコシ)やフリントコーン(家畜用飼料や工業用の原料)など分かれる。
    →とうもろこしは食用の他にも、澱粉や油分が多いので、飼料やコーンスターチ、アルコールに加工されたり、工業用品の原料にされたりする。
  • 茎や葉に、畑の栄養になる窒素分が多く含まれているので、収穫後、粉砕して、畑にすき込めば、次の作物のための緑肥になる。
    →窒素は土の中での分解が早い性質があるので、畑の栄養やバランスを整え「地力」を蓄える。
    →さらに、トウモロコシの根は、深く伸びるため、植えただけで地面を耕す。
  • 主成分はでんぷん。他にも、糖質が多く、ビタミンB1、B2、E、などのビタミン類のほか、リンや鉄、カリウムなどのミネラル成分、セルロースなどの食物繊維をバランスよく含む。
    →甘みの元は、ショ糖。消化吸収が早いので、疲れたときに食べると短時間で体力が回復する。
    →ビタミン類ではB1が豊富。B1は糖質をエネルギーに変えるときに働く大切なビタミン。
    →食物繊維が、イモ類より多く含まれている。

トウモロコシの歴史

  • 祖先にあたる野生のとうもろこしが見つかっていないため原産地と起源が明確にわかってない。
    →一説では、メキシコ、グアテマラ等の中南米付近だと言われる。
    →8千7百年前(紀元前6700年頃)にメキシコ西部のバルサ流域で、とうもろこしとカボチャが人間の手により栽培されていた証拠を発見。
  • 紀元前5000年ごろまでには大規模に栽培されるようになり、南北アメリカ大陸の主要農産物となった(アマゾンを除く)。
  • 15世紀末にイタリアの探検家 クリストファー・コロンブスがスペインへ持ち帰り、食用や飼料用、工業用として、西ヨーロッパ諸国、北アフリカ、中近東に急速に広まった。
  • とうもろこしがアジアへ伝播されたのは16世紀初め。海路ではポルトガルからインドへ渡り、チベットを経由して中国、東インド諸国へと伝わる。

日本におけるトウモロコシの歴史

  • 1579年、ポルトガル人によって西瓜や南瓜の種子とともに長崎に持ち込まれた。徐々に四国の山間部や阿蘇、富士の山麓などで栽培されるようになった。
  • 明治時代初期で、北海道開拓に伴い、北海道農事試験場がスイートコーン(甘味種)である「ゴールデンバンタム」という品種をアメリカから導入したことなどから、昭和40年代~昭和60年代にかけておやつとしての国内需要が急増。

すごあまこーん

竹田市菅生地区のとうもろこしが美味しい訳

その1.阿蘇山の恩恵を受けた土壌

菅生台地は阿蘇山が作り出したので、阿蘇の恩恵を受けた大地。
→菅生は火山灰土なので、浸透性がある。
→とうもろこしは深根性。下層の硬盤も突き抜けて深く伸びていくので、土壌が膨軟になり、透水性が良い。
→収穫後、とうもろこしを株ごと粉砕し、畑にすき込んでいる。その為、土壌が団粒構造になり、保水性にも富んだ土になる。

その2.適度な水(竹田市の湧水)

その3.寒暖差のある高冷地

  • →標高500~600mで温度差10℃以上
  • 竹田市菅生地区は宮崎県西都市に次ぐ九州第2位の産地。
  • 丘陵地なため、元々、米が育ちにくく、米の代わりにとうもろこしの栽培が盛んになった。
    →「愛媛県の山村」には、「愛媛県の山間地は、第二次世界大戦前、北海道(ほっかいどう)、阿蘇(あそ)と共に日本のトウモロコシ三大産地であった」と記されている。
    →元禄15年(1702年)から昭和25年(1950年)頃まで冬の牛馬の餌や主食用にとうきびを軒先に吊して保存していたといわれる。
    →秋に収穫し、軒先につるされたトウモロコシや庭先に立てられたトウモロコシの塔は、阿蘇の秋から冬にかけての風物詩となっていた。
    →米を節約する為、炊く際は、米と同等の量のとうもろこしを粉にしたものを加えていた。
  • 糖度18度を超すものもある。

寒暖の差が生むとうもろこしの美味しさ仕組み

  1. 寒暖の差が大きいので、朝方に霧が発生し、とうもろこしの表面には朝露がつくことが多い。
    →朝に霧が発生するのは寒暖差の印。
    →昼間の日射で温められた斜面上昇風が、夜間、川で水分補給しつつ上昇し、霧を生む。
    →朝露とは、大気中の水蒸気が、冷えた植物の表面についた水滴のこと。
    →霧には、冷却効果もある。
  2. 霧や朝露を葉・茎・実の表面にある“毛茸"が吸収し、みずみずしいとうもろこしになる。
  3. さらに、菅生は、昼間は風が強く、夜は弱いという性質がある。日中、太陽に当たり、温められた朝露が蒸発する時に生じる蒸れた空気を適度な風が洗い流してくれる。
    →とうもろこしが温まらない上、病害虫も吹き飛ばしてくれるので、病気にもなりにくい。
    →阿蘇山頂は、ほぼ全ての方向の風が吹くが、菅生は九重連山と祖母山に挟まれた傾斜を流れる風が80%を占める。

寒暖差と朝採りの関係

  • スイートコーンは、気温が15℃を超えると鮮度がどんどん下がっていき甘味がなくなっていく特徴がある。
    →日中、気温が高くなると実を生長させるために呼吸が活発になり、実に含まれる糖分がエネルギーとして使われる。
    →夜、気温が下がると呼吸が減少し、日中、葉で作られた糖分が実に送り込まれ、蓄えられる。
    →糖分をとうもろこし自体が消費する前に、収穫するので朝穫りは甘い。
  • とうもろこしを収穫したとしても、呼吸しているため、熱が発生し温度が上がってしまう。その時、エネルギー源として糖分を使ってしまうので、甘みはどんどん落ちる。
    →対策としては買ったらすぐ調理をするか、すぐ冷やすのが基本。
  • とうもろこしの甘味は、分解されると天然甘味料として多くの食品に利用される。
    →多くは「ぶどう糖果糖液糖」または「果糖ぶどう糖液糖」と表示される。
    →生産量が一番多いアメリカでは異性化糖の原料は全部コーンスターチが使用されている。

収穫方法

とうもろこしを握り、思い切り下に振りかぶり、根元から収穫する。
収穫したとうもろこしは、まず、最初に二本、根元を指で挟む。後は、片腕に抱きかかえるように置いて行く。
→研修生の一人、デヴィ君は片腕に40本のとうもろこしを持つ事が出来る。とうもろこしが1本、およそ500gなので、重さとして20kgになる。

選別方法

収穫したとうもろこしの根元を専用の包丁で切り、箱のサイズに揃える。葉を取り除き、立てるように箱に入れて、出荷。
→とうもろこしは茎の一部だが、倒れても自力で立ちあがろうとする性質(走光性)があるため、エネルギーに自分の糖分を消費する。一晩、横に寝かしておくか、立てておくかで、糖分に30%以上も差がつくといわれている。

トウモロコシの食べごろと保存方法

食べころ

  1. 皮の緑色が濃く鮮やかなものほど新鮮。
    →鮮度が低下したものは外皮が黄色くなる。
  2. ひげが褐色のもの。
  3. 軸の切り口がみずみずしいもの。
  4. ひげの数は粒の数と同じなので、ひげが多いほど粒が多い。
  5. 皮がむいてあるものは、実がぎっしり付いていて粒に弾力があり指で押すとへこむくらいが食べごろ。

保存方法

  • すぐに食べない時は、おいしさを逃さないように、できるだけ早く茹でるか、蒸してラップで包み冷蔵庫保存する。
  • 生での保存は避けたいがどうしても保存したい場合は皮をつけたままラップに包む。
    →ヒゲを上、切り口を下にして低温(3℃くらい)で立てて保存し、できるだけ早く食べる。

調理

コーンちまき

  1. すごあまこーん、しめじ、キクラゲ、人参、鶏肉をフライパンで炒める。
  2. 1にもち米と醤油・鶏ガラスープ・椎茸のダシ・塩を混ぜたスープを加え、水分がなくなるまで炒める。水分が抜けたら、隠し味にごま油を入れる。
  3. 熊笹の葉で包み、蒸し器で15分蒸す。

大分名物『とり天』風のかき揚げ

  1. すごあまこーんと鶏肉をボウルに入れ、片栗粉を和える。
  2. 天ぷら粉を水で溶き、1に混ぜる。
  3. 油できつね色になるまで揚げる。

すごあまこーんの素揚げ

  1. 生のすごあまこ~んを縦に4分の1の大きさに切る。
    ※芯が固いため気をつける。
  2. 150℃の油で揚げる。
  3. 揚がったらすぐに醤油とみりんのタレにくぐらせる。