<北澤豪 シドニー 取材リポート>
2005/12/2

ついこの間リバプールに行ったばかりですが、今月は南半球へ!
カズさんを追いかけて真夏のオーストラリア、シドニーへ行って来ました。
13日のAリーグデビューに合わせて行ったのですが、こんなにわくわくした海外取材は久しぶりだなぁと思っています。

12日、最初にグラウンドに顔を出した時はちょうど練習が終わりの時間。
入り口で待っていると、ピンクのガラモノのシャツで現れたカズさん、いきなり「きーちゃん、メシ食わない?」って、ところ変わってもカズさんらしいなぁと思いました。

カズさんが連れて行ってくれたのは、イタリアンレストラン。
もちろんカズさんはイタリア料理が大好き!でも、よーく見るとピザのチーズをよけて、いわゆる耳にあたる生地の部分だけを食べていました。
試合前には炭水化物しか取らないなど、最新の注意を払い食事管理を厳しくしています。

38歳になっても現役でいる秘訣がこういうところにも現れています。

翌日13日、いよいよカズさんのオーストラリアデビューの日です。
残念ながら、スタメンではなかったけれど、僕の予感としては途中出場はあるなぁと。
そして後半30分、カズさんがいよいよピッチへ。僕も思わず「うぉー」と声をあげていました。15分という短い時間でしたが、自分の存在を十分にアピール出来たのではないかと思いました。

翌日、カズさんと日本食を食べに行きました。
その後、インタビューが予定されていたのですが・・・実はカズさんは僕にとって「一番話を聞きたいけれど、一番インタビューが苦手な相手」なのです。
というのも話している間にカズさんが「いまさら、きーちゃんそんなこと聞くなよー。分かってるだろ?」って顔するんですよね。
選手同士って気まずいものなんですよ。

それでも頑張って聞いたインタビューです。
カズさんの本音に近づけたかなぁと思っています。どうぞ!


北澤) クラブチームNO1を決めるこの大会をどう考えていますか?
カズ) サッカーの世界って、クラブが中心なんだよね。ブラジルなんかも。クラブあっての代表なんだよね。
もちろん代表、そしてワールドカップというのも目標なんだけど。
小さな町のクラブとかがなかったら、若いやつも育っていかないしね。
そういうクラブの頂点を決める大会という意味では、すごく底辺の広い大会なわけで。この大会はサッカーにおいて大きいんじゃないかな
北澤)どこにでもチャンスはある?
カズ) 毎年の楽しみになっていく、生活の一部になっていく、そういう可能性がありますよね。
それにはやっぱりインパクト与えるために活躍しないとね、僕が(笑)
日本が出ないとね、日本がやっぱり出て行かないとね。
北澤) カズさんにとって世界とは?
カズ) 最近、自分の中で、クラブとか世界とか日本とかアジアとか。そういう区別がないんですよね。
J1もJ2もない。試合の重みは変わらない。どれも重たいもの。
若い時はさ、「調子悪いとコンディションが」とかさ逃げ道があったけど
ベテランてさ、この試合がダメだったら「引退」って言われるじゃん? いつもさ、やっぱこれが最後みたいな気持ちで今、そしてJ2でもやってたんだけど・・・そういう意味では世界も一緒だし。
北澤) 気持ちの上では同じ?
カズ) そんな中でも楽しみたいと思ってやってるし、恐れずにやりたいなと思うし。
これだけ世界的な舞台に立てることは幸せだと思っています。
北澤) サッカーはサッカー?
カズ) 前はさー世界だ!とかね、あったけど。今はサッカーをやれるからいいな。
サッカーをやろう、サッカーをやれたらいいって言うか、それがプロとしてやれること。
北澤) それは今だからそう思える?
カズ) うーん。そうだよね。今だよね。
北澤) あれ(98年ワールドカップ)出てたら、また違いますかね?
カズ) どうなんだろ・・・どうなんだろ?わかんないね、もうこれ(笑)
北澤) 僕も自分が出てたら、どうだったんだろう・・・って思いますよ。
カズ) それは何とも言えないな。でも、まぁ。同じ、同じだと思うよ。
ぶれてないと思いますよ。何があってもサッカー続けているだろうし。
考え方も変わってないだろうし。もういいやってのもないだろうし。
サッカー極めたぞとも思ってないだろうし。辞めてたとしても
サッカーは奥深いものだと思ってるだろうし。
北澤) 流されないってことですか?
カズ) 僕らサッカー好きでサッカー小僧だったわけじゃないですか。で、プロになりたくて。
それで、メシ食えるようになって。プロとして生きてきたわけで・・・人にこう惑わされることなく、自分で全て決めていくべきだと思う。
そういう意味で、やり続けていくこと、あり続けることってのが大事だと。
まあ、だから、人生ですな、もう。な?
北澤) 疲れないですか?大変じゃないですか?
カズ) だから、休みってのももちろん必要だよね。でも海なんか行っちゃうと、これまた浜で走っちゃおうかな・・・なんてね(笑)リラックスしにいったのに。
北澤)走っちゃうんですか?(笑)
カズ) 気持ちになるんだよね、ははは(爆笑)
ゆっくりしようと思ってもね。サガですね。
せっかく来たんだから・・・走っちゃおうかなと(笑)
でも、強化しようとか、追い込もうとか思わないよ。
ちょっと走ったら気持ちいいかなって程度だよ!
北澤) 確かに僕も工事中のカラーコーン並んでるの見ると、なんかスラロームしたくなりますけど(爆笑)
カズ) なんかさ、結局サッカーはさ、どんなに戦術が発達しようが、原点はストリートサッカーだと思うんだよ。
北澤) 楽しいってことですか?
カズ) 楽しまないとって思うよね。ここで1対1で負けない、ここで1対1で抜こうとかね。4−4−2、4−3−3とか4−3−2−1とかそういうことじゃない(笑)ってね?
北澤) カズさんがシドニー来ただけでも僕は成功だと思いますよ。 けど、何だろう・・・うらやましいですね。
カズ) 本当にみんなに感謝したいですね。ここに自分がいられることに。 いろんな人の協力なしでは、ここにはいられないわけで。感謝ですよね。 だから余計に大切にして、こうあせらずじっくりやりたいなと思います。 それに自分も楽しまないと周りも楽しくないよね?
北澤) 最後に大会へ向けて意気込みを!
カズ) シドニーでね、やればやるほどこのチームで勝ちたいなって意欲が 強くなるんですよ。ここに来てみんなと知り合ったり、勝って一緒に 喜んだりすると。どんどん気持ちが強くなってます。うん。 でも、落ち着いてやる(笑)空回りしない!

インタビューを終えて、僕が率直に思ったカズさんの印象は「つき抜けているなぁ」大事なことは時間がたつにつれて、純粋になっていく・・・。
僕にとっては過去となってしまった選手としての時間、カズさんにとっては今であり、未来です。
ほんの少しうらやましいと思いつつも、いつも先頭きって
日本のサッカーを変えてきたカズさんの挑戦をどこまでも応援したいと思いました。

やり続けることの難しさ、楽しさ、いろんなことを経験したカズさんだからこそ、手に入れた世界の舞台。38歳になって、むしろ「無駄」がなくなったカズさん。
心も体もサッカーが好きの一言につきます。今、サッカーで世界を目指す子供、そして大人たちにも、1日1日を大切にするカズさんを見て欲しいと思います。

----- 北澤 豪 -----