2012年2月14日放送

日本人よりも、日本人の味覚を知る外国人がいます。
フランス人パティシェ、サントス・アントワーヌさん。
彼の作るケーキは、フランスで絶賛され、数々のコンクールで表彰されてきました。
その自慢の味を、世界中に知ってもらおうと、来日したのは24歳の時。
しかし、彼のケーキは、フランスとは違い、
日本では全く受け入れられなかったそうです。

「全部のレシピをやり直して、ゼロから始めて、
今までのレシピを全部捨てたんですよ」

食文化の壁にぶつかり、自信を失ったサントスさん。
フランスで培った経験も理論もすべて捨て、黙々とケーキ作りに没頭しました。
そんな彼の支えとなっていた言葉。それが…

「『知る者は言はず、言ふ者は知らず』って言葉ですね」

「知る者は言はず 言ふ者は知らず」

(老子「道徳経」)

真理について知る者は、
それを軽々しく口にはしないものだという意味

「知る者は言はず、言ふものは知らず」これは、老子の言葉で、
「真理について知るものは、それを軽々しく口にはしないものだ」という意味。
日本人に受け入れられる味覚を口で語るのではなく、日々、手を動かす事で作り上げ、
評価されてきました。

「フランス人って本当にしゃべるじゃないですか、色々ね。
日本人はしゃべらないで。でも、しゃべらないのに
知っているんですよ、色々ね」

フランスで生まれ、日本で育まれたケーキ。多くのお客さんの目を楽しませ、
舌を魅了するため、今日もケーキ作りに励みます。