2012年9月25日放送

天ぷらの味にこだわり続ける人がいます。
天ぷら料理人・近藤文夫さん。
彼の目の前には温度の違う2つのてんぷら鍋。
素材の旨みを全て引き出す、彼独自のスタイルです。

「美味しい天ぷらはインパクトがないとおいしいって言わないんです。」

店の人気メニューはサツマイモの天ぷら。
普通は輪切りにして揚げるサツマイモを、およそ7センチの円柱にして揚げます。
180度の油から温度の低い油に移して30分。
その味は多くの人々の舌を唸らせました。
その一人が、食通としても知られる作家・池波正太郎。

「池波先生が私に言われた言葉があるんですよ。
それは「決して天狗になるな」っていうことです。」

おいしい天ぷらを求め続けた結果生まれた新しい形。
現状に甘えることなく新しい味を求め続けた
近藤さんが、いつも大切にしてきた言葉、それが…

「おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし」

思い上がる者の繁栄は長くは続かないという意味。

「私にとって天ぷらは私の心ですよ。だから天狗にならずに今でも精進しています。」

初心にかえり、謙虚に…。
今日もまた、真剣に天ぷらと向き合います。