2016年8月23日放送

武士の裃(かみしも)など日本古来の正装に使われた、葛布(くずふ)を織る…

葛布作りの職人、村井龍彦(むらい たつひこ)さん。

「(葛布の)1番の魅力というのは光沢ですね。
他の植物繊維にはないような凄くキラキラ
光って、それからやはり涼しいもので
昔から夏の衣料として使われていたんですね。」

静岡県・大井川に自生する葛(くず)。
葛布(くずふ)作りはその蔓(つる)を採ることから始まります。

「まっすぐに伸びたもの、繊維がやはりまっすぐになってくれる。
どんなに後で人間が技術をようしても素材以上のものはできない。」

採った葛は発酵させ、糸になる繊維を残して川で洗い流します。
こうして手間をかけ生まれた糸を使い、
今では着物だけでなく、バッグや傘などとして葛布の良さは生かされています。

「葛の糸は普通の糸と違いましてテープ状なんですね。
これを(普通に)ポーンとやると繊維がつぶれてしまう。
そうすると光沢が損なわれるので、
すくい打ちって言ってるんですけど、つぶさないように斜めに掬ってあげる。
簡単なように見えて一番難しい。」

葛布に向き合う村井さんが思う言葉。

「則天去私(そくてんきょし)」

自然にゆだねて生きていくという、文豪・夏目漱石の言葉です。

「葛布を作ることによって自然の恵みはありがたいなって、
ですからいつも川に行ったり、刈り取ったりする時は
ありがとうございますって、お礼を言って感謝の気持ちで帰ってくるんですね。」