2017年5月16日放送

化粧まわしを作る博多織職人、大野浩邦(ひろくに)さん。(72歳)

相撲ブームの中、力士の個性を映す化粧まわし。
大野さんは52年に渡り、大横綱たちを飾るその生地を織り続けています。
「博多織は縦糸が多いから化粧まわしで1万5千本。きっちり目が詰んでるから
ギュッと締まってほどけにくくて丈夫。」

長さ7m、幅70cmある生地を15日かけて織り上げます。
「1番大変なのは糸接ぎです。織りじゃないね。全部順番間違わんように1万5千本手で通さないといかんのよね、1本1本。織りだす準備が10日。織りだしたら5日で終るんやから。」

今年で6年目となる信彦さんでも、この作業は1か月かかるそうです。
「でもね1番私が好きなとこは糸接ぎ。機織りが始まったら糸に触ることないんよね。
だけど糸接ぎはね、糸をいっつも触るんよね。だからあんまり苦にならん。」

糸への想いも織りなす大野さんが心におもう言葉。それは…

「彫刻は一つの問いかけであり(中略)それは完成することもあり得ず、
完全でもあり得ない。」

尊敬する彫刻家アルベルト・ジャコメッティの言葉です。

「52年作ってやっとね、親父には追い付かんけど近くなったっちゅう感じはする。
織りあがった艶と手触りそういう所が違う。だから完成は無いと思う。」