2017年10月24日放送

江戸木版画・摺師(すりし)、松崎啓三郎(まつざきけいざぶろう)さん
色鮮やかに江戸の粋を今に伝える “江戸木版画”
摺師は、彫り師が彫った版木(はんぎ)に色を乗せ、刷りこみ、浮世絵を完成させるのが役目です。
「最初に輪郭を刷って、色をはめ込んでいく。多いもので40~50回、色を重ねます。
それを100枚、4~5日で刷る。“きれいに早く”というのが職人。」
その鮮やかな色彩は、たった4色(墨・藍・赤・黄)の顔料を組み合わせて作られます。
「色合わせは難しい。色の数を使えば使うほどくすむ。しかしくすませたほうが見栄えがする。
そのままだと派手すぎるから、ちょっと茶色を入れて汚してやるとか。」
わずかなズレも許されない「重ね刷り」において、要となるのが“見当”。そこにいきるのは熟練の技。
「見なくても手で“見当”に当たるのがわかるし、外れるのもわかる。この感覚がなくなったら、もうだめ。」
摺師として65年。浮世絵の最後の工程を担ってきた松崎さんが、心に想う言葉、それは…

「画竜点睛(がりょうてんせい)」

物事を完成するための「最後の大切な仕上げ」を意味する四字熟語です。

「500年も続いたものを、私たちの代で絶やせない。残していく義務がある。」