2018年6月26日放送

麦芽あめ作り、島川晋さん。
江戸時代に富山で生まれた、素朴で濃厚な甘みの麦芽あめ。
原料は麦芽とでんぷん、玄米だけ。温度の違う5つの釜を移しながら、7時間かけ煮詰めていきます。
「麦芽がでんぷんを糖に変える力があるものですから、煮詰めすぎるとカチンカチンになることもあります。
例えば今日仕上げたあめは、明日になって初めて本来の固さが分かります。」
その出来を決めるのは、原料を合わせて仕込み、一晩寝かせる時の温度と時間。
「温度が下がりすぎると酸っぱい感じになってしまいまして、温度が高すぎると逆に甘くならないんです。
だから毎朝、桶(おけ)の蓋を開けるときに“今日はいいあめであってくれよ”と、
ちょっとお願いしながら開けています。」
実はこのあめ、富山藩の主要産業だった薬と共に使われました。
「昔の薬は飲みにくいものですから、甘いあめを混ぜ合わせて薬として使われることが多かったです。」
今では富山で1軒となった麦芽あめ作りを続ける島川さんが、心に思う言葉。

「無為自然」(むいしぜん)

作為がなく、自然のままでいることを意味する四字熟語です。

「麦芽の扱いは、生き物みたいな気がして、いまだによく分かってないんですけども、
考えていてもしょうがない、自分がおいしいと思うあめを作りだしたら、
逆に上手くいくようになりました。」