2019年11月5日放送

老舗銭湯の店主 松本康一さん
東京・北千住。
ここに、90年以上、下町の人々を温めてきた銭湯があります。
「創業は昭和2年で、この建物は昭和13年に開店しまして、
外観は、ほとんど変わっていないですね。
創業当時は1日1000人くらいは軽く入っていたんじゃないかと思うんですけど、
今思うと、夢みたいな時代です。
ここの裏手に180mくらいの深さの井戸があって、吸い上げてお湯を沸かしています。
塩素のにおいもないですし、肌にまとわりつくというか、しっとりする。」
脱衣所に隣接した美しい庭と縁側には、心地よい風が吹き抜けます。
「創業した祖父が庭師をやっていたということで、
他の銭湯よりも差をつけるっていうんですかね。
“これがあるから来ているんだ”っていうお客さんもいらっしゃいます。」
減りつつある銭湯も、かつては人々が集まる社交場でした。
「我々が子どもの時代っていうのは、浴室が遊び場の1つになっていて、
お風呂に入っている知らない頑固オヤジに
“こらおい!静かにしろ!”って怒鳴られたり…
それが、自然としつけになっている。」
古き良き、昔ながらの銭湯を守る松本さんが共感する言葉、

「銭湯廃れば人情廃る」

詩人 田村隆一(1923-1998)の詩の一節です

「出来る限りは続けたいと思っているんですけど。
たまに銭湯に行って、普段の風呂とは違うのんびりした気分を味わって
“極楽極楽”って言いながら、くつろいで頂きたい。」